2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380154
|
Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
佐藤 勤 南山大学, 法学部, 教授 (50513587)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 信託 / インフラ・ファンド / 民事信託 / 信託の受益権 / 開示制度 / 指図権者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、「復興」、「インフラ整備」、「高齢化社会」の各テーマにおける信託の利用方法、およびその障壁となる事項(制度、規制等)について、以下の検討を行った。 第一に、民事信託研究会および公益財団トラスト未来フォーラムの研究会に参加し、遺言信託などを推進する弁護士等やインフラ等の信託の受託者である実務家との意見交換等を通じ、それらの信託の利用推進の障壁となっている法制度や整備が必要な法制度について解明を行った。そこでは、民事信託を広めていくには、受託者など信託事務を遂行する者の間の内部統制や金融庁などの外部機関を含めたガバナンスの構築・整備が重要であるとの認識を深めた。また、小口の民間資金をインフラ整備などに活用することにおいて信託を一層活用するには、信託の受益権に関する開示制度を、充実、整備することが必要であると認識した。 第二に、信託制度の沿革・発展経過(利用、規制を含む)、および信託活用事例に関する文献(国内外)を調査分析した。近年、国内外で、指図権者など受託者以外の者に信託財産の管理を依存する信託が増加している。そこで、「信託」の定義や仕組みを詳細に分析して、信託がどのような構造となっているのかを考察し、これらの者にどのような権限があり、義務を負うのかを検討した。 第三に、以上の研究を踏まえ、信託事務を遂行するための与えられる権限や義務の内容がどのように決定されるのかについて、「指図権者等が関与する信託における受託者等の権限および義務」(南山法学第38巻第2号1頁)を公表した。また、インフラ整備等を目的とする信託に関する開示制度の在り方の基礎調査として、信託銀行等の実務家に現状の課題等の聞き取り調査を行い、それを踏まえた現状の課題等について公益財団未来フォーラムの研究会で発表した。なお、この成果は、27年度中を目標に、公表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
民事信託を推進する実務家および商事信託の受託を行っている実務家との意見交換等を通じ、現行の法制度における課題やより信託の利用を推進するための障壁等を把握することができた。 また、理論面については、海外での論文などを調査することによって、信託事務を遂行するための権限や義務がどのように創出されるのかについて、検討した。これについては、論文(「指図権者等が関与する信託における受託者等の権限および義務」〔南山法学第38巻第2号1頁〕)としてまとめ、公表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
次の2点について、研究を深める。 第一に、信託受益権等の集団投資スキームの開示制度である。インフラ整備等に民間資金を活用するために信託を利用するには、開示制度の整備が重要となる。そこで、国内外における信託を含めた集団投資スキームの開示制度の現状について、比較検討を行い、その在り方を探求する。 第二に、信託事務遂行に関与する者の権限とその義務の内容、範囲である。信託事務の遂行における受託者とそれ以外の関係者(指図者など)との役割分担とその責任について、現状の実務の聞き取り調査、意見交換、理論面での分析等によって、その問題点と在り方を検討する。ここでは、信託における内部統制(相互監視)の在り方についても、検討を行う。
|
Causes of Carryover |
平成26年10月に手術を必要とする病気が判明し、同年12月に手術を行い、その後、平成27年2月中旬頃まで、自宅療養を行っていたため、当該時期に支出することを計画していたICレコーダー購入費用等の支出ができなかったことによるもの。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金は、当初計画通り利用し、次年度使用額として繰り越された11,811円は、平成26年12月以降に支出することを計画していた費用の支出に充当する予定である。
|