2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380164
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西岡 晋 金沢大学, 法学系, 教授 (20506919)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 資本主義の多様性 / コーポレート・ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、調整型市場経済レジームの政策変化の政治的メカニズムを解明するという本研究の目的に照らし合わせ、その出発点として、関連する先行研究を幅広く渉猟しつつ、とくにコーポレート・ガバナンスの政治過程にかかわる政治学的な先行研究を中心に理論的な検討を行った。当該研究群を「コーポレート・ガバナンスの政治学」と総称してまとめた上で、それらを、①制度中心、②利益中心、③アイディア中心、の三つのアプローチに整理して、先行研究による取り組みを検討し、以下の諸点を明らかにした。 第一の制度中心アプローチでは、コーポレート・ガバナンスの多様性の発見とそれを生み出している政治制度の差異を明らかにしている。第二の利益中心アプローチでは、コーポレート・ガバナンスの多様性や制度変化を生み出す政党政治、利益集団の政治連合、それに加えて企業アクターの権力の強さが解明されてきた。そして第三のアイディア中心アプローチでは、株主価値中心モデルの規範化にかかわるアイディアや専門知の役割、政治過程での政治アクターによる言説・フレーミング戦略に焦点が当てられ、コーポレート・ガバナンスの社会的構築の諸相が描出された。多角的な面からコーポレート・ガバナンス政治に関する分析が進められてきことは確かであり、コーポレート・ガバナンス論および政治学に対する一定程度の貢献が果たされてきた。 しかしながら、依然として課題も存在する。そもそも、コーポレート・ガバナンスという概念自体が多義的であり、論者によってその作業定義が異なっている。あるいは、政策変化のタイミング、政策変化に至るまでの長期的過程、政策変化後の政治的効果といった時間的文脈に対する配慮のなさも、研究上の課題として指摘できるだろう。また、アイディア中心アプローチに基づく研究は依然として希少である。これらの課題を踏まえつつ、次年度以降の研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、先行研究の検討を中心に進めることができ、関連する論文も刊行できたので、おおむね順調に進展していると判断しうる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降もおおよそ研究計画に沿う形で引き続き研究を進めていく予定である。平成27年度は事例研究に向けた基礎的な調査を行った後、日本でのコーポレート・ガバナンス改革を主たる事例として分析を行っていく。その際、政策変化の過程におけるアイディアや言説といった観念的要素の重要性だけでなく、初年度に行った先行研究の検討結果から、時間的文脈の重要性についても触れることになるかもしれない。
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