2016 Fiscal Year Annual Research Report
Policy Changes in the Coordinated Economies
Project/Area Number |
26380164
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西岡 晋 東北大学, 法学研究科, 教授 (20506919)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 資本主義の多様性 / 企業統治 / 政策過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「資本主義の多様性」論において調整型市場経済に分類される日本の生産レジームに関連する政策制度の変容過程を解明することにある。この目的を達成するため、日本におけるコーポレート・ガバナンスに関わる商法・会社法などの法制度の近年の改革過程を主たる事例として、質的事例研究の手法を用いて分析を行った。 平成28年度は、前年度に引き続き事例研究に取り組んだ。1990年代後半から2000年代初めにかけての「政治的機会構造」の変化に着目し、それが後のコーポレート・ガバナンス改革の政策過程にいかなる影響をもたらしたのかを検証した。上記の時期に商法・会社法の政策過程を規定する政治的あるいは制度的環境が大きく変化した。従来の政策過程においては法制審議会が最も中核的な役割を果たし、とくに商法学者と法務省民事局参事官室所属の法曹資格を有する司法官僚が中心的なアクターであった。ところが、90年代後半から2000年代初頭にかけて、政治主導の確立や行政改革が謳われるなか、法制審議会を通さずに議員立法によって商法改正が行われたり、中央省庁再編の一環として、法制審議会の部会が常設でなくなるなど、政策過程を規定する環境や制度が大きく変わった。これらの変化は、政策共同体からイシュー・ネットワークへの変化に直結し、その結果、政策過程におけるアクター間の権力関係も変わった。そして、専門家権力が相対的に弱体化する一方で、企業権力(経営者権力と投資家権力)の影響力が高まったことを明らかにした。 3年間の研究を通じて、当初の研究目的は概ね達成できたものと考える。そして、第一に、資本主義レジームの制度変化に関する新たな理論枠組みを提示して、学術的な貢献を行い、第二に、コーポレート・ガバナンス改革の分析を通じて日本の経済システムのあり方や今後の課題を探ることで、社会的にも意義深い研究になったものと考えられる。
|