2014 Fiscal Year Research-status Report
民主主義は貧困と格差を解決できるか―インドにおける州間比較分析―
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26380165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中溝 和弥 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (90596793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 民主主義 / 貧困 / 格差 / グローバル化 / 左翼 / 社会運動 / 宗教対立 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度の研究実績は、次の二つの柱から構成される。第一が、2014年インド総選挙の調査と分析、第二が、貧困と格差に関する研究の現時点でのとりまとめである。 第一点については、4月から5月にかけてインド・ビハール州で2004年総選挙より継続して行っているパネル調査を実施した。調査においては、スタグフレーションによって生じた貧困と格差が政権交代に大きく貢献したことを確認し、その成果は、2014年6月の研究会、同年10月の南アジア学会主催講演会、同年11月のアジア政経学会西日本大会で口頭において発表した。発表についてはすでに原稿の形に仕上げ、現在アジア政経学会学会誌『アジア研究』に投稿中である。 第二点については、インド・ビハール州におけるマハー・ダリト(かつての不可触民のなかでも下層に位置する人々)に対する政策に焦点を当て、貧困・格差と民主主義の関係を考察した論文を英語で発表した(“Poverty and Inequality under Democratic Competition”)。さらに、貧困と格差の拡大が直接の要因となって展開された左翼過激派の運動を、グローバル化が進む現在の文脈で分析した論文を執筆した(「暴力革命の将来」)。加えて、貧困と格差の拡大を主要な要因の一つとして展開される社会運動を、より広くインド政治の文脈で捉えた論考を発表した(「民主政治と社会運動」)。最後に、グローバル化による貧困・格差の拡大が、宗教的少数派の大虐殺に結びついた過程について2002年グジャラート大虐殺の事例に基づいて検証し、国際学会で発表すると同時に(“War on Terror and Domestics Politics”)、成果を公刊した(「グローバル化と国内政治」)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度はインド総選挙が行われたため、総選挙の調査、分析、その発表に多くの時間を割いたが、5年に一度行われる総選挙はインドが現在抱えている諸問題を分析する格好の機会であるので、妥当だと考える。 貧困と格差に関する論考のとりまとめも、ダリト政策、ナクサライト運動、より広い文脈での社会運動、そして前回の科研(「民主主義は暴力を克服できるか」)とつながる2002年グジャラート大虐殺の分析と、主要な論点を網羅しており、初年度の研究成果としては妥当であると考える。 これらの論考の結果明らかになったことは、民主的な政治的競合が、貧困と格差の解消に貢献する事例と、逆にこれらを拡大する事例の双方が存在することであった。相反する結果を導く理由については、比較分析を通じたより詳細な分析が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、当初の計画通りビハール州とグジャラート州で調査を行った。予定していたタミル・ナードゥ州については、現地調査を行うことができなかったため、2015年度に現地調査を行うこととしたい。ビハール州でも州議会選挙が予定されていることから、現地調査を行い、さらに2016年度に州議会選挙が行われる予定である西ベンガル州についても調査を行う予定である。 これら各州の比較分析を通じて、民主的な政治的競合が貧困と格差の縮小、そして拡大に結びつく過程を分析し、その上で相反する結果が生じる要因について検討したい。
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Causes of Carryover |
今年度は当初予定していたタミル・ナードゥ州調査が行えなかったため、次年度に繰り越して使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
タミル・ナードゥ州調査、ビハール州州議会選挙調査、西ベンガル州調査に使用する予定である。
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Remarks |
研究科のホームページは、業績をこれから更新いたします。
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