2015 Fiscal Year Research-status Report
民主主義は貧困と格差を解決できるか―インドにおける州間比較分析―
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26380165
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中溝 和弥 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 教授 (90596793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インド / 民主主義 / 貧困 / 格差 / 暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の研究実績は、次の三つの柱から構成される。第一が、2015年ビハール州議会選挙に関する 大規模なサンプル調査、タミル・ナードゥ州における現地調査、第二が、インドの著名な研究者を招聘しての国際ワークショップの開催、第三点が、貧困と格差に関する研究の現時点での取り纏めである。 第一点に関しては、インド政治研究者の国際的な研究グループであるIndian Election Studies Teamに参加し、2015年秋に行なわれたビハール州議会選挙に関する調査を行った。さらに、2015年夏には、ビハール州、タミル・ナードゥ州において現地調査を実施した。ビハール州では秋に行われる州議会選挙に関する予備調査を行い、タミル・ナードゥ州では、州政権による開発政策の展開を検証した。 第二点に関しては、人間文化研究機構プロジェクト「現代インド地域研究」京都大学中心拠点、龍谷大学拠点と共催で “Religious Tolerance and Overcoming Poverty”と題する国際ワークショップを、2015年11月16日に開催した。インドにおいて独自の反貧困政策を進めてきたカルナータカ州の事例、近年のインドで深刻さを増す宗教対立について検証し、貧困・格差と暴力的対立の関係について今後の研究協力も含めた議論を行った。 第三点については、貧困と格差が2014年総選挙に及ぼした影響に関し、論考を公刊した(「経済成長と宗教ナショナリズム」)。さらに、平等を一つの軸とする民主主義が農村社会の格差を是正する方向に働いた過程について論考を公刊した(「選挙と村人」)。同時に、民主主義は暴力的対立を非暴力的な形で制度化する効果を持つことを英語論文として公刊した(“Democracy and Violence in India”)。さらに、民主主義が農村社会に及ぼす影響をロシアの事例と比較しながら検証したペーパーを国際会議で発表した(“Elections and Rural Society”)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、2015年ビハール州議会選挙について大規模なサンプル調査を行い、昨年度に実施できなかったタミル・ナードゥ州調査についても現地調査を展開することができた。 貧困と格差に関する論考の取り纏めも、民主主義が農村社会に及ぼす影響という観点から、2014年総選挙に焦点を当てた検証、より長期的な視点から農村社会の変容の分析、暴力的な対立も視野に入れた制度化の過程の検証を行うことができた。さらに、ロシアとの比較の視点も視野に入れ、国際会議において議論を行った。 これらの論考の結果明らかになったことは、民主的な政治的競合が、貧困と格差の解消に貢献する事例と、逆にこれらを拡大する事例の双方が存在するものの、長期的に見れば貧困と格差を解消する方向に働くことであった。この作業仮説については、事例を増やして今後より詳細に検証していくことが必要であろう。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度は、当初の計画通りビハール州で調査を行い、2014年度に調査を行えなかったタミル・ナードゥ州で調査を行った。予定していた西ベンガル州とウッタル・プラデーシュ州については、現地調査を行うことができなかったため、2016年度に現地調査を行うこととしたい。とりわけ、西ベンガル州は州議会選挙が2016年度に予定されていることから、重点的に調査を行いたい。同様に、2016年度に州議会選挙が予定されているタミル・ナードゥ州においても調査を行う予定である。 これら各州の比較分析を通じて、民主的な政治的競合が貧困と格差の縮小に至る過程を分析し、作業仮説を検証することとしたい。
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Causes of Carryover |
家庭の事情(第一子の誕生)により、2016年2月から3月にかけての現地調査が行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年2月から3月にかけて現地調査を行なう予定である。
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