2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380169
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安井 宏樹 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60396695)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 議院内閣制 / 分割政府 / 立法過程 / 政策立案 / 政党政治 / 日本 / ドイツ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の初年度であることから、今後の基礎となる先行研究の整理を進めつつ、ドイツの事例についての分析を開始した。 まず、戦後ドイツの統治機構に関する研究を進め、(1)連邦首相の制度的な権限はそれなりに強いものであるが、連邦議会との間には議院内閣制の仕組みがあるため、与党連邦議会議員団の意向を無視することはできず、政党配置の状況によっては連立与党の意向にも配慮しなければならない、(2)連邦政府と連邦参議院が権力分立の関係に立つ「半議院内閣制」であることから、連邦与党が連邦参議院で少数派となる分割政府状態の時には、連邦野党との交渉が必要不可欠となってくる、といった知見を得て、その成果を活かした論文を執筆した。 また、それと並んで、戦後ドイツにおける要政党(pivotal party)として政権形成に大きな影響を及ぼしてきたアクターである自由民主党(FDP)についての研究も進め、(1)二大政党を凌ぐ戦後最長の政権参加歴を誇ってきたFDPは、ドイツ統一後、党の中長期的な支持獲得の礎となってきた外交政策での意義を喪失した、(2)1980年代以降の多党化がドイツ統一後に一層進展したことによって、要政党としての地位を動揺させた、(3)選挙で低迷したFDPは野党に転落し、党の貴重な政治的資源であった政治家育成機能を大きく低下させた、(4)自前の政治的資源が乏しくなったFDPは、与党への非現実的な批判を繰り返すポピュリスト政党化の傾向を強め、党の政権担当能力を逆に毀損した、との知見を得て、同党についての研究論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの収集や現地調査などの面では当初の計画より若干の遅れが見られるものの、分析・検証や研究成果の講評といった面では当初の計画以上に進展しているところもあるため、全体的に見れば、おおむね順調に進展しているものと評価できるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、文献・新聞データベースなどを活用することによる分割政府状況下での立法過程についてのデータ収集をさらに進めるとともに、ドイツでの立法過程についての情報収集を行うために現地調査を行い、さらに、日本の事例についての分析・検証を推進して、全体的な分析枠組みの精緻化に努める。
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Causes of Carryover |
平成27年2月以降の研究活動において、旅費や物品費等の支出(特に海外調査に伴う支出)が必要となることを予想し、一定程度の研究費を残していたが、本務校での業務と健康上の理由により、次年度に繰り越す結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ収集に若干の遅れが見られるので、その分野での調査活動に次年度使用額相当分を充てる計画である。
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[Book] 現代ドイツ政治:統一後の20年2014
Author(s)
安井宏樹(著),西田慎(編著),近藤正基(編著),妹尾哲志(著), 小野一(著), 大重光太郎(著), 板橋拓己(著), 葛谷彩(著), 白川耕一(著), 佐藤成基(著)
Total Pages
352 (130-145)
Publisher
ミネルヴァ書房