2014 Fiscal Year Research-status Report
君主制・世俗化・国史の創出に関する比較政治思想史研究
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26380181
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中田 喜万 学習院大学, 法学部, 教授 (50406873)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロバート・ベラー / 国家象徴 / 天皇 / 国旗 |
Outline of Annual Research Achievements |
本務校の長期研修で、平成26年9月からカリフォルニア州バークリーに滞在中である(平成27年8月まで)。 1)加州は米国でも内陸部と異なり、宗教の影響力が大きいわけではない。その世俗化した市民社会においてなお宗教・教会がどのような役割を担っているのか、実地に見聞を広めた。一言でいえば、非営利団体の一種として、市場経済で充足されない諸々の(必ずしも精神的でない)目的をもって営まれている。地域社会の結節点として、例えば選挙の投票所になったり、趣味・お稽古事の教室になったり、保育園を経営したり、貧困者の救済にあたったりする。加州で特徴的なことに、多民族・多文化社会を反映して各エスニシティの結節点となっていることも大事であろう。メキシコ系の集まるカトリック教会、韓国系の買収した教会(地域の反感を招くこともあるらしい)など。その他も移民する前の祖国に応じておよそ教会を異にしたようであるが、世代の更新によって混ざり合っている。世俗的な日系人社会が、もう三世には拡散しているのも興味深かった。 ここにいたロバート・ベラーの問題関心の前提をささやかながら理解できたように思われた。しかし、科学的知識の普及した社会(バークリーは世界的な大学町)で、宗教の進化で道徳を語れるだろうか。 2)世俗化の進んだ社会において規範は、結局のところ様々な価値観のすりあわされた政治的合意(妥協の産物)に拠らざるを得ない。実際は多様であるだけに統合の象徴(例えば君主)も必要になる。説明のつかないそれをあえて説明しようとするから、近代国家にも神話が求められることになる。粗々そんな概念図を脳裏に描いているところである。 アメリカで生活していると、アメリカと諸州の国家象徴が気になる。こちらでも国旗掲揚の問題があるようである。日本の国家象徴である「天皇」については、その称号の歴史をたどり、ほぼ原稿にできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでに先人から指摘されていたことであるが、ここバークリーを含むサンフランシスコ・ベイエリアは、近年いくつかの要因が重なり、住居の供給が不足して、家賃が暴騰している。何とか住まいを見つけて研究環境を整えるまで、随分時間を費やしてしまった。そういうわけで、当初見込んだように旅費・交通費として科研費を使用することも進まなかった。 他方、貴重な機会であるので、バークリー校の政治思想史(政治学科)や歴史学の授業をいくつか参観し、こちらの大学教育の実際を知るように努めた。これはこの科研費の研究目的に直接資することではなく、むしろ研究時間をとってしまったものの、将来的にきわめて有益なことであった。
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Strategy for Future Research Activity |
ここバークリーにおける在外研修は平成27年8月までで、その後もう一年の長期研修の予定である。二年目の長期研修の受け入れ先をすみやかに見つけ、あらためて研究環境を整えなければならない。当初の計画に示したように、二年目は欧州を希望しているが、なかなか困難もあるようである。 その間、7月にオーストラリア。ブリズベンにて、江戸時代前期の世俗化について学会報告を試みる予定がある。長期研修の受け入れ先でも何ごとか話す必要が出てくると思われる。それらをこなしながら、所期の目的に向けて進んでいきたい。
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Causes of Carryover |
「研究実績の概要」および「現在までの達成度」に示したように、海外長期研修の研究環境の立ち上げに手間どり、残念ながら、研究のための旅行を企画できる状態になかったことが第一の理由である。 時間と費用の節約のため、当初予定していた一時帰国を一回とりやめたこともある。 また、幸いなことに本務校から長期研修のための最低限の旅費・滞在費が支給されたため、この科研費の執行をしないで済んだこともある。ただし、本務校からの支給は一年限りで、二年目はこの科研費だけが頼りとなる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
8月までのバークリー滞在中に、折角なので米国内の政治(思想)史上重要な場所を見学したいと考えている。また7月のオーストラリア出張旅費もかかる。 9月以降、二年目の長期研修にあたっては、旅費をすべてこの科研費から支出することになると思われる。
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Research Products
(1 results)