2016 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative history of political thought on monarchy, secularization, and beginnings of the narratives of national history
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26380181
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中田 喜万 学習院大学, 法学部, 教授 (50406873)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本政治思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本務校から与えられた2年間の在外研修制度を利用して、2年目は英国オックスフォード大学ニッサン日本研究所に滞在した。この研究の最終年度の前半が、それにあたる。 「天皇」号の歴史的変遷についてほぼ完成原稿ができたので、それをもとに、研修先にて英語で発表する機会を得たことは幸いであった(2016年5月)。日本語版は9月に公刊された。なお、この課題は実は「上皇」号の問題とも関連するため、追加的論考の必要があるが、突如として今日の天皇の生前退位をめぐる議論がわきおこったので、その推移を見届けてからまとめることにする。 ウェストミンスターやカンタベリー、ケンブリッジなどを訪れ、英国国教会の歴史について学んだ。日英両国の世俗化の問題について、近世主権国家の成立と国家的宗教の組織や儀礼の構築、異端者の反発(そして異端者の末路)、宗教戦争と体制転換、宗教界の腐敗・堕落、宗教的寛容の確立というような指標で比較すると、興味深い異同がみえてきた。英国と異なる過程ながら確かに世俗化していった日本は、それにもかかわらず19~20世紀、いわゆる国家神道にむけた動きをみせる。機能しなくなった宗教を再び基礎として近代国家を築くという著しい奇妙さがわかる。宗教史ではなく、脱宗教の思想史を描く手がかりが、比較によって得られた。 君主制が維持される場合、過去の革命をどう語るか、(米国・仏国のような明瞭な近代的理念と異なるため)解釈の幅が大きいように思われた。また、歴史の断絶を強調するか、継続を強調するか、の差異もある(英国の国会議事堂の障壁画と明治神宮外苑の絵画館を見比べると一目瞭然)。史論の中に政治思想を見出す方法を追究するうえで、多くの着想の種を得た。 なお、2年前に台湾師範大学で報告した近世武士に関する試論が、同大学から中国語の論文集として公刊された。
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Research Products
(3 results)