2015 Fiscal Year Research-status Report
南欧クライエンテリズムの再浮上:ポスト新制度論アプローチによる比較分析
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26380186
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
伊藤 武 専修大学, 法学部, 教授 (70302784)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クライエンテリズム / 利益誘導 / 政治腐敗 / 分権化 / 南欧 / アカウンタビリティー / 新制度論 / イタリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代のイタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシアの南欧4カ国における政治的クライエンテリズムについて、経済停滞 と財政危機下で分配資源が減少しているにもかかわらず持続している問題について、分権化が進む州レベルに焦点を当ててその実態を 把握すると共に、従来のような新制度論的理論を超えた説明枠組を考察することを目的としてきた。 2年次にあたる2015年度は、引き続き対象の4カ国に関する統治制度・地方政治の制度枠組と変化に関する再確認、データの調査、現地調査 の継続、理論枠組の発展を課題として、研究に従事した。 現地調査としては、イタリアの各州を重点的に調査したほか、経済危機に見舞われ変動が激しいギリシア(アテネ)を調査した。ギリシアについては、経済危機に伴う財政緊縮強化と利益誘導政治への影響に重点を置いた調査を行うとともに、前提となる戦後政党政治について、特にPASOKに重点を置いて資料収集を行った。イタリアについては、憲法改正案に伴う 特に近年変化しつつある地方政治・政党に注目した。スペイン・ポルトガルについては、継続的に地方政治制度の改革プロセスに関する資料などを調査したほか、とりわけポデモスなど既成政党批判の増大がもたらす影響を注視した。理論的側面では、選挙制度・憲法体制など政治制度のインセンティブ構造に関する検討を深めた。 関連する研究成果としては、戦後イタリア政治に関する通史を公刊し、その中でクライエンテリズムの意義の変容について触れた他、福祉政策・憲法改正などにおけるレント・シーキング問題についても触れている。。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体として、データ収集、理論動向の再検討、現地調査の3つの骨子とも、計画に則って展開できた。 第1の点については、各種の政治腐敗や民主主義比較のプロジェクトからデータ収集を行うことができた。第2の点については、クライエンテリズム研究の理論動向を押さえたほか、選挙制度関係のプロジェクトへの参加などを通じて周辺領域の理論的議論について知見を広げることが出来た。第3の点については、対象4ヵ国のうち、イタリア、スペイン、ギリシアについて現地調査を一度以上実施し、残りはポルトガルのみとなった。その上で、地方分権、選挙制度などに関する最新情報を入手している。 このような点を踏まえて、2015年度は、イタリアを中心に、福祉政策、憲法体制に関する論文を公刊した他、海外査読誌にも関連論文を投稿し、現在R&Rの段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度については、引き続き理論的知見の深化を深めると同時に、データ分析を進めて、最終的成果の執筆に入る。 現地調査としては、中核となるイタリアの事例について調査を継続するほか、ポルトガルについても現地調査の実施を考えている。年度前半から中盤にかけての論文執筆が順調に進んだ場合は、計画最終年度、発展的課題に応募することも考えている。
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Causes of Carryover |
年度末会計処理で、注文した製品の到着が遅れたり、領収書書類の到着が遅れたりしたため、少額ながら残額が発生したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の会計処理で清算することで既に手続を進めている。
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Research Products
(9 results)