2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380188
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 哲郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30115547)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | シベリア抑留 / GHQ・G2 / ウィロビー将軍 / 米国国立公文書館 / ゾルゲ事件 / 田口右源太 / 山名正実 / 伊藤雅夫 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、陸軍情報部(MIS)のIRR 人名索引から日本人らしい名前約2000 人分を抽出し、著名人300 人分の収集・解読のほか、約500人の無名のシベリア抑留帰還者と考えられ尋問ファイル(Project Stitch該当者) を、ワシントンDC 郊外の米国国立公文書館で閲覧し、収集した。 Project Stitchとしてファイリングされた全員の氏名・経歴・出身地等の整理はなお進行中であるが、解読できたファイルの一部を用いて、11月の第8回ゾルゲ事件国際シンポジウム「ゾルゲ・尾崎処刑70周年 新たな真実」(東京)において、「戦後ゾルゲ団、第二のゾルゲ事件の謀略?」と題する招待報告を行った。これは、戦前ゾルゲ事件の被告・田口右源太・山名正実ら数人が戦後釈放されて北海道に住み農民運動等に加わったことに、GHQ・G2ウィロビー将軍等が注目し、これとシベリア抑留帰還者の中の北海道出身者、とりわけ樺太・千島出身者である伊藤雅夫・今福太郎ら、それに全国的な帰還者同盟とのつながりを想定して、一方で「戦後ゾルゲ団」ともいうべきソ連内通者の可能性のある者(PSA=Possible Soviet Agebt)を200名以上のリストにし、朝鮮戦争期に「第二のゾルゲ事件」をフレームアップする諜報工作だった。他方で、そこにリストアップされた人々を、ソ連事情に詳しい日本人として在日ソ連代表部に接触させ、米ソ「二重スパイ」にする企図も含まれていた。 これら収集資料の多くをデジタル画像化し、被尋問者リストを作成・整理できた。上記の国際シンポジウム報告は、ウェブ上の「ネチズンカレッジ」に公開し、かつ日露歴史研究センター編『ゾルゲ事件関係外国語文献翻訳集』第42号に掲載されて、ひきつづき関連情報をウェブを通じて収集することにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国国立公文書館におけるシベリア抑留帰還者、米軍Project Stitch該当ファイルの収集は、ほぼ予定通り遂行できた。その一部がゾルゲ事件と関係することが判明し、それらの解読に集中したため、収集ファイルの分類・整理・デジタル化の作業は、一部は平成27年度に継続される。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、米陸軍 Project Stitch の整理を継続すると共に、米空軍 Project Wringer の尋問資料収集を開始する。収集自体は順調に進んでいるが、平成26年度分の解読で、シベリア抑留帰還者とゾルゲ事件の関係が明るみに出たように、戦時日本関東軍の満州での細菌戦(731部隊)、戦後ソ連のスパイ事件として知られるラストボロフ事件等との関連も出てきている。今後の解読・研究は、朝鮮戦争や講話・独立の時期へも目配りして、広い視野で進めていく。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額43円が生じたのは、書籍購入等での端数である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は書籍購入等の端数43円であり、平成27年度分物品費に加えて使用される。
|