2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380188
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 哲郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (30115547)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | GHQ / 米国国立公文書館NARA / シベリア抑留 / Project Stitch / Project Wringer / 抑留帰還者 / GHQ地理課 / ラストボロフ事件 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、シベリア抑留帰還者に対する帰国時の米軍CIC尋問Project Stitchの解読・分析を行った。前提となる米国国立公文書館(NARA)所蔵CIC/IRR Personal Filesは、夏休み及び春休みの米国出張で、該当者約1000人分を収集しえた。 その中から、シベリア抑留者帰還者の中で、米国陸軍Project Stitch のカテゴリーAとして特に重視されているのが、一般兵士・民間人ではなく、(1)元憲兵隊員・警察官・特務機関員など諜報関係者、(2)東京外語・大阪外語・ハルビン学院などでロシア語を学び、ソ連の収容所でソ連側との連絡係・通訳をつとめた者、(3)無線技師・新聞社通信社勤務員など対外情報に近づく可能性のあった者、が特に注目され、PSA(Possible Soviet Agent) と分類されていることを見出した。 逆に、当初想定していた抑留所内での民主運動・日本新聞編集などに参加した共産主義者ないし共産党支持者は、個人ファイルは存在しても、PSAとしてProject Stitchの対象とされるケースは少なく、別の調査対象カテゴリーである日本共産党関係にファイリングされている場合が多いことがわかった。 また、1954年に発覚するラストボロフ事件の関係者の多くが、シベリア抑留時代にソ連に対して忠誠誓約をして早期帰国できたPSAで、アメリカ側が特に重視し、監視し続けていたことを確認できた。 米国空軍の作戦であるProject Wringer 関係のファイルも、順調に収集できた。その内容は、当初考えた通り、第3次世界戦争を想定したソ連・朝鮮半島・中国大陸の地誌情報収集であったが、特に1950年朝鮮戦争開始時に、集中的にシベリア抑留帰還者の尋問・再尋問が行われていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
基礎資料となる米国陸軍Project Stitch,米国空軍Project Wringer関係の米国国立公文書館所蔵ファイルの収集は、順調に進み、シベリア抑留帰還者の尋問資料、手記、米国側分析が大量に集まり、有意な分析が可能なところまで進展した。その中から、ゾルゲ事件、731細菌戦部隊、ラストボロフ事件、近衛文隆抑留死等に関する研究は、すでに研究会報告・講演会等で発表を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究そのものは順調に進んでおり、基礎資料の収集と分析は進んできたので、平成28年度は全体的分析と補充調査に重点をおく。ただし当初の課題とした、ドイツの戦争捕虜との比較研究が着手したばかりなので、資料的にも先行研究収集でも進展をはかる必要がある。
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Research Products
(6 results)