2014 Fiscal Year Research-status Report
ナショナリズム政党による多層ガヴァナンスへの適応に関する比較研究
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26380193
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
力久 昌幸 同志社大学, 法学部, 教授 (90264994)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ナショナリズム政党 / 多層ガヴァナンス / スコットランド / ウェールズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,イギリスのスコットランド国民党とウェールズ国民党の事例を取り上げ,多層ガヴァナンスの進展により生じた環境変化に適応するために,両政党がめざす自治・独立の目標にどのような変化がもたらされたのか,広範な社会経済政策分野の立場に関してどのような変化が見られつつあるのか,イギリスの国政政党との政党間競争のインパクトを視野に入れて検討することを目的としている。 2014年度の研究においては,主として2014年9月18日のスコットランド分離独立住民投票におけるスコットランド国民党の対応に焦点をあてて検討を行うために,住民投票期間中の9月にスコットランドを訪問してスコットランド国民党関係者に対して聞き取り調査を行った。また,スコットランドの住民投票におけるスコットランド国民党を中心とする分離独立運動と,20世紀初頭にイギリスから独立したアイルランドの分離独立運動,そして,20世紀末に二度にわたって分離独立住民投票の経験を持つことになったカナダ,ケベック州の分離独立運動との比較検討を行った。 アイルランドやケベックとの比較を通じて,帝国の恩恵の影響によりスコットランドにおいては長期にわたって分離独立の動きが見られなかったこと,および,経済的な争点に関する分離独立運動の戦略的な問題が,結果として住民投票の否決につながったという知見が得られた。 さらに,2015年3月にウェールズを訪問し,ウェールズ議会での審議を傍聴する機会を得た一方,ウェールズ国民党関係者に対する聞き取り調査を行った。2015年度にもスコットランド,ウェールズを再訪し、さらに聞き取り調査や資料収集を行う予定であるが,こうした現地でしか得られない情報を得ることにより、本研究の意義が高まるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度に予定していたスコットランド,ウェールズにおける研究調査を成功裏に実施することができた。また,本研究に関連する文献や論文などの収集もおおむね順調に進めることができたので,先行研究の枠組を批判的に検討し,本研究の比較事例分析に適用可能な分析枠組の構築に向けて着実な一歩を踏み出せたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き国内および海外研究調査を実施して,本研究のさらなる深化を図って最終年度となる2016年度中に本研究を完成させることをめざす。なお,2014年度の研究調査の実績からすると,2015年度の研究計画について特別な困難があるとは予想されないが,聞き取り調査に関して国政レヴェルやスコットランド議会,ウェールズ議会レヴェルの政治家が難しい場合には,地方自治体レヴェルや政党職員レヴェルにまで対象を広げて対応することを考えている。
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