2016 Fiscal Year Research-status Report
原子力政策をめぐるガバナンス・ネットワークに関する研究
Project/Area Number |
26380194
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
風間 規男 同志社大学, 政策学部, 教授 (50257961)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ガバナンスネットワーク / 原子力ムラ / 政策コミュニティ / ダイバーシティ / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年10月に早稲田大学出版部より「ダイバーシティガバナンスとイノベーション」と題する論文を『ダイバーシティ時代の行政学ー多様化社会における政策・制度研究ー』(縣公一郎・藤井浩司編)に発表した。本論文は、政策の行き詰まりを克服しイノベーションを引き起こす上でのダイバーシティ(多様性)が果たす重要性を指摘したうえで、ガバナンスネットワークにおいて、ダイバーシティをイノベーションにつなげるための条件をメタガバナンス論を用いて提示したものである。 当該研究では、地震津波を原因とする全電源喪失が引き起こした福島第一原子力発電所のメルトダウン事故は、「原子力ムラ」というガバナンスネットワークにおいて、アクター間が相互作用する中でしだいに凝集性を高め制度化していき、ネットワーク内のダイバーシティが失われ、思考停止状態になったところに原因があるとみている。原子力ムラというネットワークにおけるダイバーシティガバナンスのあり方を理論的に追求した本論文は、当該研究の分析枠組みの核をなすものとなる。本論文をもって、当該テーマの研究に必要とされる分析枠組みは完成をみたと考えている。 そのほか、実証部分の研究についても進めてきた。特に、福島第一原子力発電所の事故が原子力政策をめぐるガバナンスネットワークに及ぼした変化に着目して、原子力関連の出版物・報告書類、関係者へのインタビュー等、本研究テーマに必要な情報を随時集め、分析・整理を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論研究については、先行研究のレビューや分析枠組みの構築など、ほぼ完成しているものの、実証研究の部分については、原子力政策をめぐる状況が予想以上にめまぐるしく変化していることもあって、情報の収集・分析に手間取っている。原子力政策に関して日々発せられる多量な情報を整理するには、膨大な時間を要する。 予定していた海外の研究者との情報交換も、メール等でやり取りするにとどまり、実際に現地に行って議論する時間をとることができていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
原子力政策に関連する最新の情報の収集・分析に追われてきたが、時代をいったん区切って、これまでの動きの分析に注力することにした。 現在は、福島第一原子力発電所事故が原子力ムラというガバナンスネットワークにどのようなインパクトをもたらしたのかに注目して、論文を執筆しているところである。その論文を核にして、原子力ムラの成立から現在に至るまでのダイナミックな変化を描き出したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
妻及び親が大きな手術をともない相当な時間を家族の介護に費やしたこともあり、当初の予定どおり研究を進めることができなかった。 政府の原子力政策が流動的で想定したよりも複雑な経緯をたどっていることもあって、情報の収集・分析に時間がかかっており、論文や学会発表の形で成果を発信するに至っていない。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外におけるヒアリング調査(ドイツとオランダを予定)及び海外の研究者との意見交換のための渡航費用、国内調査のための旅費、原子力関連の資料代、研究に必要な物品の購入などに充てる予定である。
|