2014 Fiscal Year Research-status Report
政党不信の政治思想史的研究――ウェーバーとキルヒハイマーを中心にして
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26380195
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野口 雅弘 立命館大学, 法学部, 教授 (50453973)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウェーバー / シュミット / キルヒハイマー / 政党 / ワイマール / 亡命知識人 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代政治の一つの傾向として、政党および政党政治への深い不信がある。本研究は、マックス・ウェーバー、カール・シュミット、オットー・キルヒハイマーといったドイツ系の初期の政党研究者の仕事をいまいちど検討し、現代への示唆を得ようとするものである。 ウェーバーに関しては、ヴェーバー生誕150周年記念シンポジウム「戦後日本の社会科学とマックス・ ヴェーバー」(2014年12月7日、早稲田大学)において、討論者として議論に参加し、ウェーバーの議会論を展開した斎藤純一氏らと有益な意見の交換をおこなった。この成果は次年度活字として報告する予定である。 このほか、杉田敦・川崎修編『西洋政治思想資料集』法政大学出版局の「ウェーバー」の章を執筆し、政党と関連が深い『支配の社会学』の意義を強調した。 キルヒハイマーについては、彼の関連資料があるニューヨーク州立大学アルバニー校のアルヒーフM.E. Grenander Department of Special Collections and Archives Otto Kirchheimer Papersを訪問し、彼ののこした書簡、講義ノートなどを閲覧した。ドイツからニューヨークへ渡った亡命知識人のサークルにおける知的交流やサルトーリ、ダールら政治学者とのあいだの書簡がとくに興味深かった。「〈官僚なきテクノクラシー〉の反知性主義――キルヒハイマーの「包括政党」再論」『現代思想』2015年2月号は、こうした調査の成果の一部である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オットー・キルヒハイマーは「包括政党」という語の生みの親としてのみ知られているが、それ以外のことについてはほとんど知られていない。ニューヨーク州立大学アルバニー校のアルヒーフに行くことで、これまで知りえなかった多くの知見を得た。論文にしたのは『現代思想』に掲載された一本だけであるが、今後さらに研究を深め、成果を発表していきたい。 ウェーバーについては、彼の同時代における政党政治の文脈を勉強しなおし、またウェーバーとシュミットの「合法性と正当性」という対概念の違いなどについても発見があった。この成果は、2015年5月の政治思想学会で報告する。 このほか、ヒュームの党派論など、政党および政党批判について幅広く文献を渉猟することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はとくにマックス・ウェーバーとオットー・キルヒハイマーの政党論を個別に検討することに多くの時間をつかった。次年度はこの両者のあいだを結ぶカール・シュミットについて、いよいよ本格的に研究を進めていく。近年、ドイツでは、これまで未公開の書簡なども含めて、シュミット関連の文献が多数出ているので、まずは近年の研究のレビューをしたい。また彼の資料が保存されているデュッセルドルフの州立図書館のアルヒーフでも調査する予定である。 ウェーバーについても、最晩年の資料がウェーバー全集MWGで刊行されてきたので、ワイマール体制成立期における彼の言動をたどるという作業をしたい。
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Research Products
(6 results)