2016 Fiscal Year Annual Research Report
Prospect for Deliberative Democracy under the Transforming Policy Process of the U.S. Senate
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26380197
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
大津留 智恵子 関西大学, 法学部, 教授 (20194219)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アメリカ議会 / 民主主義 / 熟議 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、引き続き議会による移民法改正をめぐる動きを事例として調査を進め、課題研究の取りまとめ作業を行った。前年度までの文献・聴き取り調査に基づき、議会内アクターの移民法改正に対する姿勢が党派的に対立する状況と、議会外アクター、特にエスニック団体や人権団体が、議員に対して積極的な働きかけを行う状況を対置させた。両者の呼応関係を検討しながら、移民法改正をめぐる意思決定過程の特徴を考察した。 2015年度に焦点を当てて分析したオバマ政権の非合法移民への行政措置に関しては、その後複数の州政府による違憲の訴訟を受け、最終的に司法が否定的判断を加えるという展開があった。こうした展開を通して、連邦レベルにおける分割政府状態のみでなく、異なるレベルの政体間でも、移民問題を扱う姿勢における分割状態が生じていることで、移民問題をめぐり実質的な解決を導きだすことが困難となっている状況を確認した。本課題の成果を土台とし、さらに熟議の実質化についての研究を進める上では、対象を連邦議会に限定するのではなく、異なる政体間の対応関係をも考察に含める必要がある。 また、2016年は大統領選挙の年であったため、移民をめぐる問題は大統領と議会の双方の選挙戦において争点として大きな影響を及ぼすことになった。特に、非合法滞在者と特定国からの移民への対応をめぐり、両党の間で候補の立ち位置が明確に対立したことで、移民問題はこれまで以上に政治化される結果となり、熟議を通した政策形成とは反対の方向に進むこととなった。こうした展開について、共和党の地盤でありながら、北西部にマイノリティ居住区を含むインディアナ州を取り上げ、現地で移民をめぐる市民社会アクターに対する聴き取り調査を行い、調査結果の分析を行った。 本課題の最終的な取りまとめ作業の一環として、移民法改正をめぐる近年の流れを整理した紀要論文を刊行した。
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Research Products
(2 results)