2015 Fiscal Year Research-status Report
半大統領制における大統領のリーダーシップに関する研究―台湾の事例を中心に
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26380200
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
松本 充豊 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00335415)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 台湾 / 半大統領制 / 統合政府 / 分割政府 / 政党組織 / 国民党 / 民進党 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、台湾の半大統領制における政策決定を実証的・理論的に分析し、大統領にあたる総統のリーダーシップのあり方を考察することにある。本年度は、李登輝政権期と陳水扁政権期を対象に、立法院での議案の審議・採択状況の実態を分析した。李政権期には、行政院(政府)提出法案の採択率が70%を超え、議員提出法案の採択率を大きく上回った。法案の平均審議日数についても、前者の方が後者に比べて相対的に短くなっている。これに対し、陳政権期には、行政院提出法案の採択率が李政権期のそれを大きく下回ったことに加え、議員提出法案の採択率をも下回った。法案の平均審議日数では、行政院提出法案の審議日数が議員提出法案のそれを大幅に上回った。その理由として、まずは、李政権期には国民党による統合政府が実現していたのに対し、陳政権期には分割政府状態に陥ったことが指摘できる。陳政権期の議案の審議・採択状況からは、立法府を握る野党・国民党が与党・民進党の政権運営に大きくブレーキをかけていた様子が伺える。こうしたことから、李総統は「強い」リーダーシップを発揮できたのに対し、陳総統はそうではなかったと結論づけることができる。 また、李政権期のデータからは、行政院提出法案の審議・採択が優先され、国民党所属議員による法案提出が抑制されていたことが明らかになった。それだけ国民党の党中央による所属議員に対する政党規律が効いていたといえるわけで、それもまた同党の党首を兼任した李総統のリーダーシップの「強さ」に寄与したと考えられる。なお、陳総統のリーダーシップと民進党の政党組織との関係については、目下のところ民進党による統合政府が実現しておらず、実証的に検証することができない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
議会制度が議会運営における主導権争いをどの程度規定したのかについての実証分析が遅れているため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、第1に、前年度の調査手法に基づき、馬英九政権期(2008~2016)における立法院での議案の審議・採択状況の実態を明らかにし、その研究成果を踏まえて馬総統のリーダーシップのあり方について考察する。第2に、歴代民選総統のリーダーシップの比較分析を行い、半大統領制導入後に進められた選挙制度改革や政党組織改革が、総統のリーダーシップのあり方に与えた影響を分析し、執政制度とその他の政治制度との相互作用とその効果について明らかにする。
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Causes of Carryover |
為替相場の変動や滞在日数の短縮により、海外出張旅費が当初予定した金額よりも低く抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の旅費に繰越して使用する予定である。
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