2016 Fiscal Year Research-status Report
半大統領制における大統領のリーダーシップに関する研究―台湾の事例を中心に
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26380200
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
松本 充豊 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (00335415)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 台湾 / 半大統領制 / 選挙制度 / 政党組織 / 政党規律 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、台湾の半大統領制における政策決定を実証的・理論的に分析し、大統領にあたる総統のリーダーシップのあり方を考察することにある。本年度は、選挙制度改革と政党組織改革の政治的帰結について分析した。議会にあたる立法院の選挙制度は、2008年選挙から従来の中選挙区制を中心にしたものから、小選挙区比例代表並立制へと変更された。しかし、立法委員選挙における個人投票の重要性が依然として高く、党首・党執行部が政党規律によって与党議員の支持を取り付けるのは難しいことが明らかになった。中選挙区制の時代に培われた選挙文化が今も変わらず、むしろ新たな選挙制度(小選挙区制)の下で個人投票の重要性が高まっている面もあるためである。政党組織改革では、政権担当時期には総統が与党党首を兼任する制度が民進党、国民党で相次いで導入された。両党では、これにより総統のリーダーシップが強まることが期待された。しかし、国民党の馬英九政権の事例をもとに検証したところ、上述の選挙制度改革の影響に加えて、(国民二大政党とも)立法委員候補者の公認ルールが世論調査を重視した、より「民主的」なルールに変更されたことから、所期の効果がもたらされていないことが確認された。つまり、台湾の現行の制度設計の下では、総統が与党党首を兼任し、政党規律によって与党所属の立法委員の支持を取り付けようとしても、それは容易ではない。総統は「上から」のトップダウン型のリーダーシップは発揮しづらいといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
選挙制度改革と政党組織改革の政治的帰結について、陳水扁総統のリーダーシップの事例をもとに検証することができず、また歴代民選総統のリーダーシップの比較分析に着手することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、李登輝総統、陳水扁総統のリーダーシップのあり方について考察する。特に半大統領制導入後に進められた選挙制度改革や政党組織改革が、陳総統のリーダーシップのあり方に与えた影響を分析し、さらに歴代民選総統のリーダーシップの比較することで、執政制度とその他の政治制度との相互作用とその効果について明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度の研究計画への取り組みが、他の研究活動によって時間的に圧迫されてしまった。これに加えて、予定していた課題の一つである歴代民選総統のリーダーシップの比較分析において、特に選挙制度改革と政党組織改革が総統のリーダーシップに与えた影響を考察するのに想定以上の時間を要する結果となり、当初計画の進捗に遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に主に物品費と旅費に繰り越して使用する予定である。
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Research Products
(3 results)