2017 Fiscal Year Annual Research Report
The possibility of a theory of the state without sovereignty: the thought and action of Hugo Preuss
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26380201
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
遠藤 泰弘 松山大学, 法学部, 教授 (30374177)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ドイツ政治思想史 / 主権 / ワイマール / フーゴー・プロイス / オットー・ギールケ / カール・シュミット / 自由主義 / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ワイマール憲法48条の大統領緊急権の導入をめぐる、憲法制定ドイツ国民議会の議事録の分析を進めた。その結果、以下の3点が明らかとなった。 第一に、48条は、制定当時の政治的危機状況の中で、起草者および制憲議会のメンバーにとり、共和国を護るための合憲的独裁として構想され、制定されたことが明らかとなった。 しかし第二に、憲法発効後の厳しい政治情勢の中で、条文からの逸脱が恒常化し、特に48条4項については、制定趣旨に全く反する運用がなされるようになったことが判明した。 さらに第三に、当初、合憲的独裁の条項として、シュミットの委任独裁論も援用しながら、48条を擁護していたプロイスが、シュミットの影響およびエーベルト大統領の死去に伴うヒンデンブルク大統領選出という政治状況の変化の中で、48条の濫用の懸念を強調し、48条に対する制限の必要性を説くに至ったことが明らかとなった。 これら研究の成果と、前年度までに明らかとなった研究成果を総括し、北大政治研究会において研究報告を行ったほか、これら成果を総括する論文の執筆準備を進めた。また、「デモクラシーはなぜ崩壊したのか―ドイツ・ワイマール共和国の経験に学ぶ―」と題して、市民向けの講座を2回に分けて開催したほか、その内容を論文にまとめたり、『現代日本の立憲主義をめぐる学際的研究―憲法学、行政法学、政治学の観点から―』と題する共著を出版するなど、一般社会向けの研究還元にも力を入れた。
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