2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380204
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
草野 大希 埼玉大学, 人文社会科学研究科(系), 准教授 (90455999)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は大きく分けて二つある。第一はグローバル・ガバナンス(GG)時代の介入事例についての資料・文献収集である。具体的には、「保護する責任(R2P)」の適用例と位置づけられた2011年の対リビア軍事介入、並びにイラクに住むヤジディ教徒の保護を主目的に2014年夏に開始された米軍を主力とする「イスラム国」掃討作戦(対イラク・シリア軍事介入)に関連するメディア報道や学術論文を収集した。申請書の「研究計画」では、同時代の介入事例に関する研究は平成28年度に実施する予定であったが、申請時には想定されていなかった「イスラム国」掃討作戦が実施され、現時点でも継続していることから、前倒しで情報収集することが必要かつ効果的と判断した。 また、Thomas G. Weissに代表される人道的介入(HI)やR2Pに積極的な研究者の論文や著書に加え、HIやR2Pに批判的な研究者(例えば、人道主義に基づく外部からの介入を期待した国内アクターによる「モラル・ハザード」に着目し、対リビア介入にも批判的なAllan J. Kuperman)による論稿の収集にも努めた。ただし、これら資料・文献に基づく分析を十分に進めることはできなかった。 第二は、19世紀末-20世紀初めの米州において米国の介入を正当化する理念となったモンロー主義(MD)が、どのような過程を経て、東アジアで台頭する日本の地域覇権の追求(近隣国への介入を含む)に影響を及ぼし、究極的には日米の「対立」にまで繋がって行ったのかを解明した。米州と東アジアにおける地域秩序の連鎖を規定した、介入正当化原理としての「MD」と「日本版MD」の同時代的展開を合わせて考察した点に、本研究の意義がある。その内容を纏めた論文「日米の台頭と地域的国際秩序の連鎖」を完成させ、『国際政治』第183号への掲載も決定したが、年度内の刊行とはならなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請書における平成27年度の研究計画では、冷戦時代の米ソ両陣営内で行われた介入事例に関する政策決定および実施過程の考察を行う予定であったが、学務・教務による多忙に加え、上記のように研究対象とすべき事例(対イラク・シリア介入)が新たに加わったため、研究が計画通りに進んでいるとは必ずしも言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度において特に力点を置くべき作業は、平成26年度に収集した19世紀ウィーン体制下の欧州における介入事例の資料も含め、これまで収集した資料の整理・解読・分析を行い、その結果を論文としてまとめ、公表することである。 本研究における最大の課題は、目下、十分な研究時間の確保であるので、適切な時間管理・配分に努め、研究の推進を図りたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は、計画書において想定していた旅費(主として米国での学会参加)の支出が実際には無かったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として、研究成果の公表の一環としての学会発表の旅費、または英文校正の費用として活用する計画である。
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