2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380204
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
草野 大希 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (90455999)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 保護する責任 / 人道的介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、グローバル・ガバナンス時代の介入事例として、アメリカのオバマ政権が関与した「保護する責任(R2P)」としての対リビア軍事介入および2011年の反政府運動開始から内戦状態に陥っているシリアに対する介入(不介入)についての研究を進め、その結果を「学会発表(論題:オバマ政権の介入政策における「アメリカ例外主義」―リベラル介入主義の可能性と限界―)」(日本平和学会)および「学術誌掲載論文(論題:文「オバマ政権の介入政策における「アメリカ例外主義」―不安定な世界におけるアメリカの自画像の再構築―」(『アメリカ研究』)の形で公表した。 本研究の主目的は、「米国民の内向き志向」と「米国の力の相対的衰退」という二つの介入「抑制」要因に直面していたオバマ大統領がどのようなプロセスや正当化を経てリビアやシリアの問題に介入(不介入)していったのかを解明することである。対象事例は、(1)国連安保理決議を伴うR2Pの一環として実施された対リビア空爆(カダフィ政権は崩壊)、(2)シリア内戦:内戦停止や人権保護(更にはアサド政権打倒)を目的とした軍事介入は回避する一方、アサド政権による化学兵器使用に対して化学兵器禁止機関の関与による非暴力の解決を図る、(3)イラク・シリア領内で勢力を拡大する「イスラム国」打倒を目指す軍事介入、である。 これらの事例に共通するオバマ政権の特徴は「多角主義的なアメリカ例外主義」による介入の正当化およびその遂行であった。すなわち、介入の実施に際して国際的正当性(多角主義)のみならず、「例外主義」(独特の歴史・政治・社会制度を持つ米国は他の先進国とは異なる独自の存在であり、世界において顕著な役割を果たす運命にある、との信念)という「シンボル」(理念)に訴えることで、中東の人道危機に対する米国の特別な「役割」を国内外に提示し、その介入政策を遂行したことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
・当初の研究計画において本年度に実施すべき「21世紀の介入事例」についての考察には一定の進歩が見られたが、前年度からの積み残し課題となっている「19世紀ウィーン体制下の欧州における介入事例」および「冷戦時代の米ソ両陣営内で行われた介入事例」については、十分な研究成果を出すことはできなかった。 ・その主な理由は、学務・教務の多忙により研究に十分な時間が割けなかったことである。
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Strategy for Future Research Activity |
・平成29年度において特に力点を置くべき作業は、「19世紀ウィーン体制下の欧州における介入事例」および「冷戦時代の米ソ両陣営内で行われた介入事例」についての考察を行い、その結果を論文としてまとめることである。 ・平成29年度は研究計画の最終年度であるが、研究の完成のためには一年延長も避けられないと思われる。 ・適切な時間管理・配分に努め、研究の進捗を図りたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、計画書において想定していた程の旅費や謝金の支払いがなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は研究内容に関係する資料収集に優先的に使用することに加え、本研究計画の終了年度の延長を視野に入れた研究成果公表に関わる使用(学会発表に伴う旅費や研究上の助言に関する謝金)を計画している。
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