2014 Fiscal Year Research-status Report
グローバルな規範形成とローカルな記憶形成:ラテンアメリカの人権NGO・学習・連帯
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26380222
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
杉山 知子 愛知学院大学, 総合政策学部, 准教授 (90349324)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 移行期正義 / 集合的的記憶 / ラテンアメリカ / 民主化 / 国際規範 / グローバル・ジャスティス / ミュージアム / チリ |
Outline of Annual Research Achievements |
移行期正義とグローバル規範形成に関する先行研究の整理及び批判的検討をおこなった。移行期正義の議論については、冷戦後の体制移行社会を対象とした議論と紛争後社会を対象とした議論が混在しており、これらの先行研究の整理及び移行期正義の類型化が今後の課題である。この点を踏まえ、グローバル規模での移行期正義の理論研究の争点整理及び批判的検討を続ける予定である。過去の人権侵害についての真実や正義を求める動きは、その国固有の政治社会事情があり、ラテンアメリカ諸国、さらには一国における首都圏や地方都市が均一的な動きをしているわけではないと思われる。 平成26年度は、チリおよびコロンビアにおいて過去の人権侵害に対する記憶形成及び記念事業関連施設視察を行った。チリでは、首都圏における人権侵害関連施設として人権記憶博物館やアジェンデ関係の慰霊碑を中心に視察した。チリのピノチェト軍事政権下の人権侵害に関する常設展示に加え、軍政期に海外亡命せざるを得なかった人々に関する展示、海外に亡命したアーチストによる展示があり、人権侵害を狭義に捉えていないことが理解できた。また、博物館ショップでは、アジェンデやMIRのミゲル・エンリケを商品化したポストカードなども販売されており、過去の政治家に対する評価について示唆に富むものであった。チリの事例については、研究の一部を国際学術会議(2015CELAO)において発表しグローバリゼーションの影響についてのコメント・フィードバックを得た。 コロンビアでは、和平プロセスの一環として設立された歴史記憶国立センター及び、記憶・平和・和解センターを視察した。後者は、ボゴタ市との連携により設立され、ボゴタ市の公共空間の一部である。コロンビア内戦に限らず、これまでのコロンビアの政治的暴力の歴史とリンクさせたイベント企画も開催されていることが理解できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、チリでの現地視察では、首都圏における人権記憶博物館視察および首都圏・地方都市での人過去の人権侵害に対する慰霊碑視察などを行い、国レベル・地方レベルでの過去の記憶形成についての現状把握を行った。他のラテンアメリカ諸国との比較という観点からコロンビアの首都ボゴタでの視察も行った。移行期正義の先行研究について、体制移行後の社会の移行期正義と紛争後社会の移行期正義の先行研究の整理及び移行期正義の類型化は容易ではないと思われるが、研究目的の達成に向けておおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度同様、移行期正義に関する先行研究及びラテンアメリカ諸国を中心とする人権侵害関連施設・人権・記憶博物館・人権侵害の慰霊碑などの視察を中心に研究を進める予定でいる。また、研究経過ではあるが、国内外の学会・研究会において研究の一部を報告する予定でいる。尚、チリの事例については、平成26年度の視察を行う中で、過去の記憶に関連し、チリにおけるアジェンデ及びアジェンデ政権の評価についての検討が課題であると感じるようになり、この点に留意しながら研究を進めていきたいと思う。
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