2020 Fiscal Year Research-status Report
冷戦時代の台湾海峡危機の再検証~マルチ・アーカイブ研究による外交史的分析~
Project/Area Number |
26380228
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
松本 はる香 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター東アジア研究グループ, 研究グループ長 (90450543)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 外交史 / 国際関係史 / 台湾海峡危機 / 米中関係 / 中国 / 台湾 / マルチアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新型コロナウイルスの影響もあって、海外出張で資料調査を行うことが難しいという異例の状況にあったことから、日本国内における研究に重点を置いた。主には、米国のナショナル・アーカイブ、スタンフォード大学のフーバー研究所や、台湾の国史館、中央研究院近代史研究所トウ案館、国民党党史館、そして、中国の外交部トウ案館、華東師範大学当代文献史料中心などで、これまで収集してきた資料を改めて整理し、比較の視点に立って読み込み作業を行なってきた。 特に、国史館の総統関係資料や、中華民国外交部関係資料などを精査することによって、台湾側とアメリカ側の外交資料の比較の作業を進めるとともに、日本の外務省外交史料館や、東京大学東洋文化研究所現代台湾文庫などが所蔵する、台湾関連の資料なども、必要に応じて参考にした。以上のような作業を踏まえて、本の最終章となる部分の執筆を開始した。1960年代初頭の第三次台湾海峡危機未遂事件については、ケネディ政権の反対によって、蒋介石が大陸反攻作戦の実行を断念したため、実際には危機が発生しなかった。このためその顛末については余り歴史上知られていない部分でもあると言ってよい。その際、国府側がどういった意図を以て外交を進めていこうとしたのか、その歴史的インプリケーションも含めて、分析を行った。同研究の成果については、今後、学術誌などを通じて発表する予定である。 また、今年度は、現代の米中関係や台湾問題に関する論文を含む、松本はる香編著『米中新冷戦と中国外交――北東アジアのパワーポリティクス』(白水社、2020年10月)の上梓に漕ぎ着けた。これは冷戦史に連なる現代の外交史研究として、本科研事業とも関わる重要な研究成果のひとつと位置づけられるだろう。 来年度は本科研事業の最終年度に当たる年のため、これまでの研究成果を総合的に取り纏める方向で、引き続き作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新型コロナウイルスの影響で、台湾などでの海外資料調査が難しい状況にあったものの、これまでのアメリカ、台湾、中国などにおけるアーカイブ史料調査に基づき1960年代の第三次台湾海峡危機についての史料を再整理して、研究論文を纏める作業を進めた。また、その際には、日本の外務省外交史料館や、東京大学東洋文化研究所現代台湾文庫などが所蔵する数々の貴重な台湾資料なども活用して研究を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる残りの1年で、これまでの研究成果を学術書として纏める予定である。今後の出版の見通しや研究助成などについては、編集者との話し合いを進めており、現在調整中である。
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Causes of Carryover |
前年度末、新型コロナウイルス特別措置のため、当該科研費事業の1年間の延長手続きを行った。今年度の予算は、コロナ情勢を見極めつつ、主に物品費(携帯用パソコンの買い換え、PC周辺機器の購入など)に充てる予定である。
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