2014 Fiscal Year Research-status Report
エージェントモデルによる地域経済に対する補助金の影響の事前評価の方法の開発
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26380231
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
江頭 進 小樽商科大学, 商学部, 教授 (80292077)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネットワーク分析 / 補助金 / 効果測定 / シミュレーション / 商店街 / 地域経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はシミュレーション作成の下準備である、地域内のネットワーク形成についてのアンケート調査を行った。その結果、ある特定の地域、組織内のネットワークでも多層化、複雑化が進んでおり、特に歴史が古いネットワークほど、表面上の関係性は弱いにもかかわらず、構成員の意識のシンクロニシティの程度が高いことがわかった。これはネットワークが現在の状況になるまでの試行錯誤が関係していると思われる。 実際の地方経済においてこの性質は、活性化に際する大きな障害になっている。たとえば衰退が進んでいる商店街などでは、バブル崩壊以降幾度となく活性化事業を行ってきたが、ほとんどの場合、メンバー共通の成功体験に至ることがなく、逆に失敗の経験が高齢の商店主に共有されることとなっている。その結果として、各商店主は他との結びつきにあまり熱心では無くなり、個店の維持にのみ専心してる傾向が見られる。これは各商店主の子ども世代が、地域の活性化とネットワークの再建を試みる際の最大の障害となっている。親の世代は子の世代が、自分の店舗以外の活動に時間を割くことを歓迎しない傾向にあり、また子世代の様々な活性化案に批判的な姿勢を取ることが少なくない。小樽市内の具体的なイベントに関する意識の調査は、この高齢者世代の非積極性が、ネットワークの再生の障害になっていることを示している。 この事例は、具体的な経済を考える場合、ネットワークの希薄化とやぶれだけでなく、ストロー効果的な要素も考慮しなければならないことを示唆している。一般的なネットワーク分析において、閉じたネットワークにばかり注意が集中しがちであるが、実際には各ノードは同じでは無く、ネットワーク内のヒトモノカネの流れに対して強く働きかけるケースがある。この問題は、さらに掘り下げる必要があるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
26年度は、当初の予定通りシミュレーションモデルを作成するための準備であるアンケート調査とその分析を完了した。それに加えて、地域の商店街の実際の活動のいくつかに関与する機会を得た結果、ネットワーク内の実際のコミュニケーションを直接観察する機会を得た。その結果、地域への補助金に関わる地域外の存在(コンサルタント)の重要性を確認することができた。 これらの結果は27年度に当初予定していたネットワーク・モデル化に新たな視点を付け加えることができると考えられる。当初の予定では、ネットワーク内のヒトモノカネの流れの強度と方向性のみに注視しモデルを作成することになっていたが、今回の観察から各ノードの性質の違いやネットワークと外部の経路が重要であることがわかった。 27年度中にはこれらの成果を考慮して、発達型ネットワークとは異なる意味での、開放型ネットワークのモデルを構築する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これ以降は当初の予定通り、地域内のネットワークを再現したシミュレーションモデルの作成を行う。すでに述べたが、事前調査の結果、ネットワークのノードの性質と外部へのコネクションを考慮したモデルとすることが必要である。地域に投入された補助金が地域の中を十分循環せず外部へと流出してしまうことはしばしば指摘されているが、本研究ではその現象を地域ネットワークの変遷史の視点から捉え、モデル化することを試みる。
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Research Products
(2 results)