2016 Fiscal Year Annual Research Report
Empirical Analysis on price stickiness and inflation expectations
Project/Area Number |
26380233
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
上野 有子 一橋大学, 経済研究所, 非常勤研究員 (80721498)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | インフレ期待 / 非対称性 / 不確実性 / 合理性 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に沿って、昨年度から継続して行ってきたニューケインジアンフィリップスカーブの推計結果を取りまとめ、2016年夏には内閣府経済社会総合研究所でセミナーを行った。推計結果が不安定であることや、セミナーで出たコメントを踏まえ論文の改訂作業を継続中である。 推計結果から得られた主な含意は、日本のインフレ動向の背景には過去を参照するバックワード、フォワードルッキング両方の要素があるものの、推計期間中の構造変化製造業の中でも加工型業種のインフレ動向はニューケインジアンフィリップスカーブと整合的であるが、素材型業種ではあまり整合的とは言えないことなどが挙げられる。これらの解釈としては、90年代末以降我が国ではデフレ傾向が顕著となったことから、海外との厳しい競争にさらされている業種では特に、価格改定時には将来を慮って行動する傾向が強まった可能性が考えられる。なお、本研究の当初の問題意識であった価格設定行動の非対称性については、業種別に詳細推計を行ったりインフレ期、デフレ期と期間を分割するなどにより検証を試みたが、はっきりした含意が得られなかった。 またアンケート調査を昨年度実施した消費者のインフレ期待形成と実現インフレ率との関係については、論文を3本とりまとめ1本は2016年夏に一橋大学経済研究所の定例研究会で報告後ジャーナルに刊行(2017年1月)された。2本は海外ジャーナルに投稿中、ないし修正作業中である。 これらの論文から、消費者のインフレ期待形成には相当程度の不確実性が伴っているが、将来のインフレ動向に関連する情報を提供するとこうした不確実性が減少するとともに、不確実性が高い消費者ほど新しい情報に大きく反応してインフレ期待を改訂していく合理性が示唆された。
|