2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380239
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 新介 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (70184421)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セルフコントロール / 双曲割引 / 時間割引 / 意志力 / 消費 / 糖尿病 / 負債 / 健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
2つの課題について以下の研究を実施した。 課題(1):セルフ・コントロール問題下の消費・貯蓄行動モデルの構築 ■セルフ・コントロール行動が短期的に意志力を消耗させる一方で、より長期的には鍛錬の効果によって意志力を強化する方向に働くような消費者行動モデルを開発した。実施に当たって、心理学における「意志力の筋肉モデル」を拡張し、さらに「誘惑モデル」のアイデアを取り入れながら、初年度に開発した試論的な消費・貯蓄選択モデルをより一般的なものにした。現段階では論文は執筆中。■金沢星陵大学の張琳氏と共同で、無意識的に消費が習慣化してしまうためにセルフ・コントロールが効かずに消費が過剰になってしまうナイーブな子供と、その子供に対して所得移転を低く抑制する利他的親の規律付け行動を説明するモデルを開発し、その含意を子供の厚生の観点から明らかにした。論文は投稿中。■小樽商科大学の廣瀬健一氏と共同で、逓減的時間選好率がもつ一般均衡論的含意をマクロ経済モデルの中で解明し、2本の査読論文としてまとめた。 課題(2):セルフ・コントロール力の実証分析 ■セルフ・コントールに問題があるかどうかを、双曲割引の有無とその自覚の有無によって識別し、それが人びとの不健康の度合いや負債残高と相関をもつことをサーベイデータによって明らかにした。それらの成果は査読誌に出版された■H26年度末に行ったアンケート調査にもとづき、1型糖尿病患者、2型糖尿患者、および糖尿病を患っていない一般社会人の3者の選択・行動特性の違いを、セルフ・コントロールの観点から分析し、2型糖尿病患者がほかの2者よりも高い双曲性とせっかちさを示し、同時により低いセルフ・コントロール能力を示すという仮説を支持する結果を得た。この結果は、コンファレンス「行動経済学・行動ファイナンスのフロンティア」で報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2つの課題(1)、(2)それぞれについて、計画通りの研究が行えたと考える。とくに、その成果が4本の査読論文と1冊の単著の形で出版、もしくは採択された。さらに、こうした一連の研究に関連して、日本の行動経済学の代表的な論文を集めた論文集を英書の形で2冊編集したことも部分的には本科研の成果と考えられる。 さらに、セルフ・コントロールサーベイを用いた糖尿病有病者対象のアンケート調査データの精査・解析も順調に進んでいる。セルフ・コントロール能力や現在バイアス(双曲割引)と2型糖尿病の関連性について仮説を支持する結果が得られており、論文にまとめる段階にまで来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(1)については、「誘惑モデル」を発展的に取り入れた意志力モデルを完成させ、完成論文を国際査読誌に投稿する。さらに投稿中の張氏との共同論文については、査読結果に応じて改訂し、できるだけ早く出版にこぎ着ける。 課題(2)については、行動経済学的アプローチによる糖尿病有病者の研究の成果を論文にまとめ、投稿にまで持っていく。
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Causes of Carryover |
年度初めに予定になかった米国海外研修に平成27年1月より入り、セルフ・コントロールに関する一部実証研究を年度内に行うことを取りやめたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外研修による新知見に基づいたアンケート調査(新知見による必要性によっては経済実験)を平成28年9月の帰国以降(平成28年12月あたり)に行う計画である。
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Research Products
(12 results)