2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380249
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
小田 秀典 京都産業大学, 経済学部, 教授 (40224240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 一仁 関西大学, 社会学部, 准教授 (50405487)
西野 成昭 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90401299)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 実験経済学 / 実験哲学 / Kobe Effect |
Outline of Annual Research Achievements |
1.前年度までに実施したノーブ効果(悪い副作用を意図的と見做す一方で,良い副作用を意図的と見做さない傾向)についての実験結果を国際会議(英国実験哲学学会など)で報告するとともに,(京都産業大学の資金を得て)国際会議「経済学と哲学における意識と意図」を主催し,当研究課題についての報告および意見交換をした.新たな発見は,以下の通り.(1) ノープ効果は,従来は予想される副作用の善悪に基づくものと考えられてきた(他者に対して悪い副作用が予想されることをすると,その副作用も意図的と見做されるが,他者に対して良い副作用が予想されることをしても,その副作用は意図的と見做されるない)が,予想されない副作用についても結果の善悪に基づいて発生する.(2) 副作用が意図的か否かについての自分自身の意見と他者の意見の推測の乖離があり,自分は意図的と認めない副作用でも他者はそれを意図的と見做すかもしれないと見做す傾向が観察される.(3) 自分がある副作用を意図的と見做すか否かの意見と,他者がそれを意図的と見做すか否かの推測に相関があるが,その分布が二峰であること,すなわち,ほとんど全員が自分と同意見と見做す被験者たちと,半数をやや上回る割合の人たちが自分と同意見の見做す被験者たちに別れる.
2.研究課題に関する実験(実験室実験および質問紙調査)を京都産業大学で実施した.結果を分析中であるが,自分と他者の利益だけでなく,他者の意図の判断が意思決定者の効用関数に含まれることを示唆する結果を得ている.これと,1のノーブ効果の関連と経済的含意について分析中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の国際会議の実施,およびそれと組み合わせて実施した中国およびマレーシアの学生,院生,研究者を招聘しての実験経済学の国際交流活動(JST さくらサイエンスプラン)のため,本研究計画のためにあてる時間が当初の予定より短くなり,そのために短期的には遅れた部分(実験室実験の実施)がある.しかし,どちらの活動も長期的には本計画に貢献する(前者は海外および他分野の研究者との新たな交流,後者は海外の大学研究機関との連携)ものであり,研究計画全体としては,十分な進展があった.
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Strategy for Future Research Activity |
1.H27年度に学会報告した内容について,必要な追加実験を実施して研究をまとめたい.とりわけ自身の意見(自分は何を公平と思うか)と推測(他者は何を公平と思うと思うか)は集団全体として相互に依存する.これについての実験結果の分析は,H27年度の学会報告などで好意的に迎えられたと思う.しかし,分析には不十分な点もあり,H28年度は分析を完成させたい.
2.予算の観点から難しいと考えていた国際比較実験も,昨年度の国際交流活動を通じて資金的にも制度的にも可能になった.H28年度中に国際比較実験を中国およびマレーシアで実施し,いま得られている日本での実験結果と比較したい.
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Causes of Carryover |
H27年度に実施予定の実験を,国際会議での報告と討論にもとづき修正してH28年度に実施するため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由の通り,実験のためにあてる.
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