2015 Fiscal Year Research-status Report
メカニズムにコミットできない状況下での市場取引・情報伝達の問題
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26380252
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
清水 崇 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80323468)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組織の経済学 / チープ・トーク・モデル / 貨幣のサーチ・モデル / 定常均衡の非決定性 / 経済実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
投稿した雑誌からの要求により、論文"Can More Information Facilitate Communication?"(大阪大学の石田潤一郎氏との共著)を改訂した。この論文ではCrawford and Sobel (1982)流のチープ・トーク・モデルに受信者が追加的な私的情報を得られる可能性を導入し、受信者の私的情報がチープ・トークによる情報伝達をより効率的にすることを示した。これは従来のチープ・トークの研究で見られなかった結果である。さらに改訂版においては、これらの結果が成立する環境をより一般化した。
同様に、投稿した雑誌からの要求により、論文"Cheap Talk with an Exit Option: A Model of Exit and Voice"を改訂し、再投稿するとともに最新のヴァージョンをディスカッション・ペーパーにした。この論文では、Crawford and Sobel (1982)流のチープ・トーク・モデルに送信者の退出オプションを導入し、退出の信憑性がチープ・トークによる情報伝達を高めることを示した。この退出と情報伝達の補完性は、Hirschmann(1987)で議論された退出と発言の補完性を理論的に示したことと解釈できる。さらに改訂版においては、より一般的なクラスの均衡を分析することにより、上述の結果が成立するためには、受信者の退出利得が小さいことが必要であることを明らかにした。
また、東京大学(当時)の神谷和也氏、関西大学の小林創氏、大阪府立大学の七條達弘氏との共同研究で、貨幣サーチ・モデルの実験を行い、その研究成果をまとめた論文"Price and Equilibrium Selection in Monetary Search Models: An Experimental Approach" を作成中である。この研究では、定常均衡の実物的非決定性という理論結果を背景に、実際にはどのような価格・均衡が選択されるのかを経済実験を通じて明らかにすることを企図している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
経済実験において、想定した通りの結果が出なかったため、追加的な対照実験が必要になり、その準備および結果の分析に時間が掛かったことが理由である。具体的には、貨幣均衡への収束が明確に観察されなかったため、他の被験者の取引価格を観察できる設定の対照実験を必要とした。
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Strategy for Future Research Activity |
貨幣サーチ・モデルの実験について、今年度行った実験結果をより明確にするために、追加的な対照実験を行う必要がある。具体的には、パラメータの値を変更した場合およびグループの人数を増やした場合で価格や貨幣保有分布の収束の様子がどのように異なるかを比較する。
また国内外のコンファレンス・研究会に参加・報告することにより、専門家との交流を図る。
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Causes of Carryover |
経済実験において、想定した通りの結果が出なかったため、追加的な対照実験が必要になり、その準備および結果の分析に時間が掛かり、海外でのコンファレンスの報告に間に合わなかったことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
申請者の今までの研究成果を発展させる形で研究を進めつつ、国内外のコンファレンス・研究会に参加・報告することにより、専門家との交流を図る。特に次年度使用額については、国内の研究者との共同研究打合せについて支出する予定である。
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