2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380254
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
橋本 努 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40281779)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 新自由主義 / 経済思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、論文Discourses on Neoliberalism in Japan, in Eurasia Border Review, Vol.5, No.2, Fall 2004, pp.99-119.(査読付き)、および、「「新自由主義」批判の変容 ラッツァラートとロルドン」『経済社会学会年報』XXXVI号、2014年9月刊行、140-149頁、所収(査読付き)を、それぞれ刊行した。また編者として橋本努編『現代の経済思想』勁草書房、2014年10月、644頁を刊行し、その中で論文「労働--理想の仕事とは何か」115-138頁、を執筆したほか、多くのコラム執筆を担当した。関連書籍として、共著、大澤真幸・塩原良和・橋本努・和田伸一郎著『ナショナリズムとグローバリズム 越境と愛国のパラドックス』新曜社、2014年8月刊行、345頁を刊行した。関連論文として、 “A Theory of Methodology in Social Sciences: A Functional Analysis”『法学論集』(千葉大学)第29巻、第1・2号、2014年8月刊行、596(27)-560(63)頁所収、「高田保馬の勢力説」猪木武徳+マルクス・リュッターマン編『近代日本の公と私、官と民』NTT出版、2014年10月刊行、249-264頁、所収、「コミュニタリアニズムのために 概念の再規定『相関社会科学』第25号、2015年3月刊行、123-128頁、所収、「可謬主義と熟成主義の立法過程論」井上達夫編『立法学のフロンティア1』ナカニシヤ出版、2014年7月刊行、150-168頁、所収を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本研究を三つの段階に分けた。そのうちの第一段階と第二段階を、達成できたと考えている。研究の第一段階とは、同概念を学説史的に検討しつつ、とりわけ90年代後半以降の論争によって生じた「概念変容」の問題を整理することであった。この研究については、論文「「新自由主義」批判の変容 ラッツァラートとロルドン」『経済社会学会年報』XXXVI号、所収によって、独自の観点からの貢献をすることができた。この他、大学の学部演習においては、課題「サッチャーとレーガン」をグループ発表として取り上げ、理解を深めることができた。研究の第二段階として、私は「新自由主義」の概念が様々な分野で誤解を生みつつ批判されているのではないかという関心から、教育・社会・経済等の諸分野におけるディスコース分析を試みることを計画した。これについては、論文Discourses on Neoliberalism in Japan, in Eurasia Border Review所収によって、詳細な検討を試みることができた。「新自由主義」の概念が、現代のグローバリズムとナショナリズムが交錯する中で、どのような文脈的意義を獲得したのかについては、共著『ナショナリズムとグローバリズム 越境と愛国のパラドックス』のなかでも検討している。また、新自由主義の経済思想を含めて、現代の経済思想がもたらした新たな知見に関する総合的分析として、編著『現代の経済思想』を刊行することができた。これらに関連していくつかの関連論文を公表し、国際講演や国際学会報告を通じて、自らの研究成果の一部を発信することができた。この研究がもたらした一つの重要な社会的意義は、原発再稼働をめぐって、電力制度をどのように運営すべきかについての私見を、新聞インタビューを通じて発信できたことである。
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Strategy for Future Research Activity |
残された二年間の研究計画は、すでに査読付き論文として公表した内容の分析を継承して、その応用や関連する諸問題に携わることである。当初の予定通り、研究計画の第三段階を遂行したい。あわせて研究成果を広く公表していきたい。現在、計画が具体化しているものは、台湾の大学における国際講演、および、規範理論研究会における報告、経済学史学会全国大会におけるセッション、などである。この他、日本社会学会全国大会におけるテーマ・セッションや、国際法哲学会における報告、経済社会学会における報告などを検討している。 関連して、新自由主義の概念史や、現代における新自由主義批判の文献を大学院講義等で検討していく。昨年度末には、深せん大学の経済研究センターとの交流によって、中国や東南アジアにおける経済特区の研究に関するやり取りをすることができた。これからは同大学の研究誌に投稿したりシンポジウムに参加したりすることを検討したい。アイファ・オング(カリフォルニア・バークレー校教授)著『《アジア》、例外としての新自由主義』(原著2006年)は、アジア新興諸地域における新自由主義の展開と現象をまとめている。こうした手法を学び、日本の視点から貢献できる研究を探りたい。あわせて、現代における東アジア諸国の経済体制が、どこまで新自由主義化しているのかについて、OECDやWorld Bankが提供する指標を用いて分析を進める。これについては、クラスター分析によって、資本主義の多様性論に対する批判的な知見を提起できるように進めたい。
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