2014 Fiscal Year Research-status Report
経営資源論的アプローチによるイギリス古典派経済学の研究
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26380258
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
村田 和博 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00300567)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経営資源 / 古典派経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
経営資源論や古典派経済学の文献収集を進めつつ、それら資料を用いて経営資源に関する諸理論の理解を深めるとともに、経営資源論を分析ツールとして用いた古典派経済学研究の可能性を模索した。そして、この研究成果を「古典派経済学における経営資源論的アプローチの可能性」(『下関市立大学論集』第58巻第2号)において公表した。論稿では、まず、経営資源論に関するこれまでの先行研究を紐解き、リソース・ベースド・ビューの立場からレントの種類(リカードウ的レントとシュンペーター的レント)とその発生根拠、経済価値・希少性・模倣困難性など競争力を有する経営資源の特質、経営資源の活用能力に関わる組織ケイパビリティ、環境の変化に対応できる組織能力を意味するダイナミック・ケイパビリティなどについて考察した。次に、経営資源の中のヒトに着目し、能力開発、及び外発的動機づけと内発的動機づけなどのモチベーションの理論を明らかにした。さらに、経営資源としての知識を取り上げ、モノ、ヒト、カネという経営資源とは違う知識の持つ特質を明らかにした。 経営資源の特質を解明した後に、古典派経済学における経営資源論的アプローチの妥当性を探るべく、経営資源の偏在に着目しつつリカードウとJ.S.ミルのレント論を、また、モチベーションと能力開発の観点からスミス、バベッジ、及びオウエンの人的資源管理論を部分的にであるが検討し、古典派経済学の分析手法として経営資源論を用いることが可能であることを示した。本稿により、人的資源だけでなく、知識や技術なども含め経営資源論の立場からより総合的かつ体系的に古典派経済学を研究する展望が開けたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画は資料の収集、経営資源論に関する諸理論の理解の深化、及び経営資源論の古典派経済学への適用可能性を模索し、それを平成26年度秋以降に論文としてまとめることであった。その課題について考察した論稿を発表できたことから、平成26年度の研究計画をおおむね達成できたと判断する。ただし、計画以上に研究が進んでいるわけではないので、「おおむね順調に進展している」と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
アダム・スミス、J.S.ミル、C.バベッジ、A.ユア、R.オウエンといった古典派経済学者たちの企業に関する叙述を抽出し、技術、知識、ヒトといった経営資源に関する諸理論を分析ツールとして用い、それら叙述を分析する。そして、当時の企業経営に関する学説史的特質を吟味し、当時のイギリスの経営学が未発達であったとする通説を再検討する。 平成27年度は、経営資源論を含む経営学の理論を用いたアダム・スミス研究を遂行し、その研究成果を論文にまとめ公表する予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度の計画では、文献収集がうまくいかなかった場合には、長期休暇を活用して、資料を多く所蔵する研究機関で集中的に調査する予定であったが、資料の収集が比較的順調に進んだため、その必要がなくなり、旅費が計画よりも少なくなったために64,595円の残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
古くなった情報機器があるため、プリンタまたはパソコンを購入する予定である。
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Research Products
(4 results)