2015 Fiscal Year Research-status Report
経営資源論的アプローチによるイギリス古典派経済学の研究
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26380258
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
村田 和博 下関市立大学, 経済学部, 教授 (00300567)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経営資源 / アダム・スミス / チャールズ・バベッジ |
Outline of Annual Research Achievements |
アダム・スミスの『国富論』に依拠しつつ、彼の企業経営にかかわる叙述を経営学の視点から考察した。そして、この研究成果を「アダム・スミスに関する一考察―経営学的アプローチ―」(『下関市立大学論集第』第59巻第2号)において公表した。本論稿では、スミスは価値ある情報や技術を排他的に占有することによって発生する特別の利潤を捉えてはいる。だが、それを戦略形成と関連づけることなく、偶然の出来事として理解している点を経営学上の問題点として述べた。一方、人的資源に関するスミスの叙述の中には内発的動機づけを含む多様なモチベショーン法を読み取ることができ、その点については評価できることを指摘した。 また、論稿「イギリスにおける分業論の展開」(『現代経営学の潮流と限界―これからの経営学―』所収)では、スミス、バベッジ、ウェイクフィールド、およびJ.S.ミルの分業論の特質をそれぞれ述べたうえで、古典派経済学期の分業論においては、社会的分業の概念は読み取れるが組織間関係への広がりが見られないこと、さらに、組織の調整者としての管理職能を深化させることができなかったという問題点を指摘した。一方、古典派経済学期においては、分業の利益については、現代で指摘されているほぼすべての利益が認識されていたという点を評価した。 最後に、学会報告「経営資源論的アプローチによるチャールズ・バベッジの考察」(経済学史学会西南部会第120回例会)では、バベッジが、第一に、費用を低減させる方法として、機械、人、知識といった経営資源の諸要素に着目したこと、第二に、激しく変化する環境下にあって、企業は経営資源を活用することによって短期のレントを追求すること、を明らかにしたことを述べた。一方、問題点として、企業の持続的競争力の構築を重視しなかったことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度においては、アダム・スミスに関する研究成果を公表できたとともに、チャールズ・バベッジの研究を進めることができたので、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
アダム・スミス、C.バベッジ、R.オウエン、J.S.ミルといった古典派経済学者たちの企業に関する叙述を抽出し、技術、知識、人といった経営資源に関する諸理論を分析ツールとして用い、それら叙述を考察する。そして、当時の企業経営に関する学史的特質を吟味する。 平成28年度には、平成27年度の後半から研究を始めた経営資源論を含む経営学の理論を用いたバベッジ研究に関する論文を公表する。また、申請課題に関するこれまでの研究成果を学会で報告予定である。
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Causes of Carryover |
注文していた図書の一部の発行が遅れ、平成27年度中に購入ができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書の購入にあてる。
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