2016 Fiscal Year Research-status Report
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26380261
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
三田 剛史 明治大学, 商学部, 准教授 (00624107)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 経済思想史 / 中華人民共和国 / 社会主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.資料調査 2016年4月には掛川市立図書館大東館の松本亀次郎文庫で史料調査を行い、生涯にわたって中国人留学生教育に注力し、日本に留学した中国人知識人に大きな影響を与えたと考えられる松本亀次郎の直筆書簡、受取書簡などを調査した。 同年7月には、中国の上海図書館および杭州市の馬寅初記念館を訪問し、1950年代の中国における経済論争の状況を調査した。上海図書館では、1950年代に中国の経済学界が、どのような関心を持ってソ連の経済学を摂取していたかを知るために必要な文献を閲覧、複写した。中国における農業集団化や、社会主義経済における価値法則の問題について、ソ連経済とソ連経済学界のどのような経験と議論を参照したかを調査できた。杭州では、馬寅初が現代中国において、特に出身地である浙江省においてどのように評価されているのかをその展示から考察することが出来た。また、関連資料を収集できた。馬寅初が今日の中国では、西側でも通用する経済学的知見が高く評価されていること、日中戦争時代の愛国主義的言論が近年着目されていることが看取された。 2.学会報告 2016年6月に北海道大学で開催された社会経済史学会第85回全国大会において、「中華人民共和国の社会主義化をめぐる論争―反右派闘争と大躍進までの中国―」と題する報告を行った。同報告では、1955年以前については、北京で発行されていた『建設』や『学習』などの雑誌における経済学や経済政策に関する論文を、1955年以後については、経済専門誌として創刊された中国科学院経済研究所の雑誌『経済研究』における論文を史料として扱い、これらの雑誌で展開された「我が国過渡期における経済法則の問題に関する討論」などの論争を検討し、社会主義化前倒しについて中国の経済学界ではどのような論争が行われたのかを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに、北京、上海、杭州で資史料調査を行い、日本国内における先行研究も収集し、1950年代の中国における経済論争の検討を行ってきた。その過程で、ソ連からの影響について再検討をする必要に迫られている。社会経済史学会全国大会における報告で受けた他の研究者からの助言や批判をもふまえ、さらに検討を深化させる必要がある。また、北京、上海以外の経済学者の参与を調べるために、厦門において史料調査やインタビューを行いたいと考えている。 しかし、2016年度後半は、研究以外の業務の多忙などにより、計画通りに研究が進捗せず、調査先との日程調整も出来なかった。そのため、当初の3年計画からさらに1年間研究期間を延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度の重点は、厦門における調査、および1950年代の中国の経済学会へのソ連の影響についての研究である。 前者については、王亜南が学長を務め1950年代の中国経済学界の一つの中心地であったと考えられる厦門大学において、関連する経済学者の史資料調査を行い、出来れば当時の関係者へのインタビューを行いたい。 ソ連の影響については、1950年代の中国の雑誌に掲載されていたソ連や東欧の経済学者の論文を検討し、中国の経済学界との関係を研究する。資料調査の場所としては、東洋文庫およびアジア経済研究所が考えられるが、必要に応じて北京ないし上海での再調査を行う。
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Causes of Carryover |
2016年度後半に、厦門等において史資料調査を行う計画であったが、研究以外の業務多忙と先方との調整が出来なかったことにより、計画通りの調査を行えなかった。そこで、研究期間を2017年度に延長し、厦門での調査を行うこととする。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した研究費は、厦門への史料調査に用いる。使途は旅費と資料の購入、複写費である。 また、上述の1950年代のソ連の経済学界からの中国への影響を調査するため、資料の複写等に用いる。
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Research Products
(1 results)