2015 Fiscal Year Research-status Report
金融化論の理論的研究:ポストケインジアンと認知資本主義論の視点から
Project/Area Number |
26380265
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Research Institution | Ohtsuki City College |
Principal Investigator |
内藤 敦之 大月短期大学, 経済科, 教授 (40461868)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 金融化 / 認知資本主義 / 金利生活者の安楽死 / ケインズ / ミンスキー / ネオリベラリズム / 金融主導型レジーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、基本的な文献のサーベイだけでなく、金融化の理論的検討を中心に研究を進めた。第一に、金融化論の理論を中心にサーベイを行った。特にミンスキーの金融不安定性論に注目した。第二に、金融主導型レジームに関しては、その特徴と問題点を検討した。第三に、認知資本主義論に関して金融化とネオリベラリズムの関係を検討した。 本年度の成果としては、第一に、「「金利生活者の安楽死」論の現代的意義」という題で第5回ケインズ学会(立正大学)において報告を行った。第二に、これをもとに「「金利生活者の安楽死」論の現代的意義」(『大月短大論集』第47号、2016年3月)を発表した。この論文では、ケインズの「金利生活者の安楽死」論を検討し、特にその現代的意義として、ケインズの長期ヴィジョンとそれが実現しなかった要因としてのネオリベラリズムについて金融との関係を考察した。第三に、認知資本主義論に関しては、2016年4月に刊行予定の『認知資本主義』(山本泰三編、ナカニシヤ出版)の内容を元にしたセッション「認知資本主義の展開」を第40回社会思想史学会大会(関西大学)において企画した。第四に、"Controversies on Endogeneous Money, Finance and the Multipliers: Classical Debate on Interest Rates in 1930s and Two Modern Controversies of 1980s and 1990s"(Post Keynesian Review, Vol. 3, No. 2, http://js4pke.jp/pkr/PKR/2015/201506naito.pdf)を発表した。これは、ポスト・ケインジアンにおける投資ファイナンスを巡る論争を、『一般理論』刊行後の利子率を巡る論争と結び付け、考察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、文献のサーベイに関してはほぼ予定通り進み、また、文献の検討及び論文の準備作業に関しても、順調に進んでいる。なお、成果の発表に関しては、認知資本主義に関する論文集へ投稿したものは編集作業が遅れたため、2016年4月刊行予定となっている。また、報告に関しては予定通り行った。このため、全体としてはほぼ順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究の目標を達成すべく、理論的、経済思想史的な検討を中心に作業を進める。第一に、内生的貨幣供給論における金融化の位置付けに関して、サーベイを行う。ミンスキー自体の分析だけでなく、その影響を受けたポスト・ケインジアンによるリーマン・ショック等の金融危機の分析も検討する。第二に、金融化現象が近年の金融危機とどのような関係があるのかを検討するために、金融危機事態の実態を検討するためにデータの整理を行う。第三に、金融主導型レジームをベースに、金融化の過程を明確に統合したレジームを検討し、提示したい。第四に、ケインズの「金利生活者の安楽死」論の検討によって得られた視点をもとに、金融化と所得分配について分析を行う。さらに、金融化の進展に関する政策論的考察も行う。ここでは、金融機関の規制だけでなく、ネオリベラリズム的な政策との関係も検討する。第五に、ケインズの『一般理論』における金融市場の批判的考察を取り上げ、その意義を検討する。また、金融化のグローバルな側面との関係で、ケインズの国際金融論における資本移動の取り扱いも注目に値する。 研究成果の発表に関しては、第一に、内生的貨幣供給論と金融化の関係に関して進化経済学会等で報告を行う。第二に、金融化と所得分配、あるいは金融化に対して必要な政策論に関して、ポスト・ケインズ派経済学研究会等で報告を行う。第三に、金利生活者の安楽死論に関する原稿を修正し、Journal of Post Keynesian Economics等に投稿する。
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