2015 Fiscal Year Research-status Report
確率的コピュラモデルによるリスク管理・最適資産配分
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26380268
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
中村 信弘 一橋大学, 大学院国際企業戦略研究科, 教授 (90323899)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 確率的ヴァインコピュラ / 共和分投資 / Hamiltonian Monte-Carlo / 確率的裾依存コピュラ / GH-skewed t分布 / 高頻度データ解析 / 動的誤差修正モデル / 確率的共分散モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
確率的ヴァインコピュラの応用で、まず、共和分投資問題を研究した。通常よく用いられるVECM(Vector Error Correction Model)を次のように一般的なものに拡張した。(1)定数項や誤差修正項に時変構造を導入、(2)残差項には(GH-skewed-t分布に従う)確率ボラティリティモデルを仮定、(3)それらの依存関係は、確率的ヴァインコピュラでモデル化。推定には、最近、開発されたHamiltonian Monte-Carlo法を試み、うまく推定できることを確認した。 共和分関係にある資産数が多くなると、共和分ベクトルが複数存在することがある。その場合に、動的計画法による定式化を行い、HJB方程式を解くことで、最適な投資比率を導くことに成功した。実務でペア・トレードを拡張した3銘柄以上の共和分投資に道を開くものと考えられる。 次に、確率的ヴァインコピュラを為替エクスポージャの動的ヘッジ問題に適用する研究を行った。外貨建て資産と多通貨の時系列の3変量以上の確率的依存構造のモデル構築に確率的ヴァインコピュラを援用した。その結果、動的なヘッジ比率によるヘッジ効率の優位性を確認した。 更に、株式指数とボラティリティ・インデックスの間の負の依存関係および他国間の同指数の相互作用(spillover)を表現するために、確率的ヴァインコピュラを用いた。裾依存の変化を捉えることができ、市場の混乱期と平常時の依存構造の特徴的振る舞いを分析した。 最後に、資産間の動的な依存関係を表す別のモデルとして、確率的共分散モデルを研究した。主要先進国の市場インデックスに投資する国際分散投資の枠組みで、マルチ・ファクターモデルの外生的ファクターが多変量確率的共分散構造をもち、各残差項が高頻度データから計算される実現分散で補強された確率ボラティリティに従うようなモデルを開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果を4つの論文にまとめ、関連学会での発表を6件行うことができた。共和分投資や最適資産配分、リスクヘッジ問題に対して、確率的コピュラモデルが実装可能であることが確認でき、良好な結果が得られた。 具体的には、依存構造の確率変動に関して、下方だけでなく上方にも確率的依存構造を入れたモデルの推定を行い、リスク資産のヘッジ効率向上に役立てることが可能であることを示した。金融実務への応用では、共和分投資の一つであるペア・トレードを拡張して3銘柄以上の共和分投資の可能性を提案した。また、市場参加者の間で相場のリスクオン・オフの目安として利用されているVIX等のモデルフリー・インプライドボラティリティ(VI)と当該指数の間の(負の)確率的依存構造を調べた。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルの頑健性を検証するため、H.27年度は研究費で東証の日本株高頻度データ(HFD)を直近の年度末まで追加購入した。H.28年度は、東証アローズ導入以降の7年分のHFDを用いて、実現分散だけでなく、より高次の実現モーメントやそれらの確率変動を考慮したような新たな資産価格理論、それらに基づくファンド評価、最適マネ―ジャー選択、資産運用モデル等の研究を推進していく。 推定方法に関しては、Hamiltonian Monte-Carlo法を用いたが、その他、最近、機械学習の分野で使われる効率的な近似的推定手法である変分ベイズ法などを試し、既存の方法と精度、効率性の比較検証を行う。 H.28年度は最終年度となるため、研究を取りまとめて、当該分野の学術雑誌への投稿を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
H.27年度に発注したPCメモリーが、H.27年度中に届かず、次年度以降となったため、注文をキャンセルした。発注したPCメモリーはマザーボードに対応するものが旧型式であったため、メーカーの生産切り替えで品薄となったと考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越し金で、PCメモリーを購入する予定である。型落ちで価格が下落していることが予想されるため、残額がある場合は、書籍等の購入に充てることを考えている。
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Research Products
(10 results)