2014 Fiscal Year Research-status Report
パネル動学離散選択モデルの開発と女性のライフコース分析への応用
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26380273
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
鹿野 繁樹 大阪府立大学, 経済学部, 准教授 (80382232)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | パネルデータ / 動学プロビット / 労働供給 / 婚姻 / 出生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、個票パネルデータに基づく新たな動学的離散選択モデルの開発、および推定・検定方法の提案である。さらにこれらの手法を、就業や婚姻、出産といった、日本人女性のライフコース上の意思決定メカニズムの実証分析に応用する。 本年度は主に資料・先行研究の整理といった準備に時間を費やし、限られた時間で計量手法の開発を開始した。まず厚生労働省『人口動態調査』や総務省『労働力調査』などに基づき、地域・社会属性別の女性の出生や婚姻、労働供給を概観した。次いで動学モデルの理論研究とその応用に関する先行研究を整理した。 計量手法として、本年度は主にパネルデータによる動学プロビット(dynamic probit)モデルに関し、定式化の検定を提案した。動学プロビットは、個人の二値アウトカム(働く・働かない、など)が、過去の意思決定に依存するモデルで、パネルデータによって最尤推定される。この研究計画では今後、動学プロビットを拡張したモデルを実証分析に使う予定である。 動学プロビットモデルの最尤推定は、個人に関する二値アウトカムの時系列同時分布が正しく定式化されていることを前提とし、この前提が満たされない場合、パラメータ推定はバイアスを伴う。しかし一方で、バイアスを回避するための一般化された動学プロビットは推定が困難である場合が多い。そこでこの研究では、通常の動学プロビット推定のあとで、一般化されたモデルを推定することなく検定を行う方法を提案した。具体的には、モーメント法によるカイ2乗検定である。この成果は、大阪府立大学大学院経済学研究科Discussion Paper New Series Number 2015-5として公開されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定は、大別すると次の通りであった。(1)資料・先行研究の整理、(2)利用データの申請、(3)可能であれば計量手法の開発。(1)に関しては予定通り、(3)に関しては予定を上回る成果を得ることができた。ただし(2)は、申請後の更新手続きなどの観点から、次年度に持ち越すこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、計量手法のパートを完成させ、モンテカルロ・シミュレーションにより、各推定方法の有限標本におけるパフォーマンスを検証する。また、「女性の婚姻決定と負の期間依存性」および「就業選択の異質性」の実証分析を開始する。学会・セミナーへの参加を継続する。 なお26年度における動学プロビットの定式化検定の成果は、The 21th International Panel Data Conference, 2015(Central European University, Budapest)にて報告予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は初年度ということもあり、リサーチ・アシスタントの募集に遅れたため、人件費の部分が当初の予定より大幅に低くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額に関しては、リサーチ・アシスタントの雇用時間の延長、および国際学会への渡航費に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)