2015 Fiscal Year Research-status Report
家計の住宅ローン選択と住宅資産選択行動に関する国際比較分析:日英豪を中心として
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26380276
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
森泉 陽子 神奈川大学, 経済学部, 非常勤講師 (20166383)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / イギリス、オーストラリア / 住宅金融 / 住宅ローン分析 / パネル分析 / 資産選択 / 匿名データ利用 / 持家率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,世界的金融危機後の先進各国の住宅金融市場・住宅市場の変化を,異なった住宅金融システムのもとでの家計の住宅ローン選択・需要行動及び住宅を含む資産蓄積行動に焦点を置き分析する.対象はオーストラリア、イギリス、日本である。2015年度は3か国パネルデータの整備をほぼ完了させ、推定作業を開始した。具体的に本年度の研究実績を以下の3つに分けて記述する. (1) メルボルン大学でワークショップを開催し、連携研究者が各国の経済・デモグラフィック状況の概要を報告した。3か国間の経済成長率、失業率、少子化、高齢化等の程度の違いを踏まえ、住宅・住宅金融市場の相違を国際比較分析しmimeoにまとめた。これらの市場における3か国間の相違点・類似点が明らかになった。 (2) 本研究の主な目的の1つは、住宅ローンタイプの選択と住宅需要関数の同時推定を各国別に行い、それを基に各国の住宅ローンに関する家計行動の相違を明らかにすることである。同時にそこから派生する住宅金融市場動向を分析し、政策含意を導き出すことである。2015年度はイギリス(BHPS)と日本(KHPS,JHPS)についてパネル推定を行った。日本の推定は昨年の学会発表のコメントを踏まえて改良したものである。mimeoとした。イギリスの推定はさらに改良が求められる。 (3) イギリス、オーストラリアでは、住宅ローンは変動金利型と短期(1~2年)固定金利型のみであるのに対し、日本は非常に多くの金利タイプの住宅ローンがある。よって、この相違を考慮し、日本については、各種の住宅ローンタイプのデータがある、住宅市場動向調査(国交省)の7年間のデータをプールして、住宅ローンタイプと住宅ローン需要関数の同時推定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3か国のパネルデータ整備について、イギリスは完了し、日本についても新しい調査年次のデータを加えバージョンアップが完了した。よって、それぞれの国別の推定に利用可能である。オーストラリアについてもデータを入手し整備をしている。以下具体的に記述する. (1)メルボルン大学におけるワークショップでの報告をもとに、3か国の住宅市場・住宅金融市場の比較分析を行い類似点および相違点を共有し、それらをもたらした要因を明らかにした。なお、日本以外のイギリス、オーストラリアの住宅資産を含む家計資産データ(マクロデータ、ミクロデータ)はまだ一部しか得られていない。よって家計の資産保有に関する国際データ比較は十分ではない。mimeoの段階である。 (2)本研究の目的を達成するためには、各国の住宅ローンの選択と住宅ローン需要関数の同時推定を行う必要があるが、そのうちイギリス (BHPS)及び日本(KHPS, JHPS)についてはパネル推定を行った。前者はイギリスのパネルデータを用いた推定であり、後者は昨年度の学会発表でのコメントをもとに、再推定作業を続けているところである。イギリスとの比較においては、推定の手法は基本的には同じであるが、利用できる変数が必ずしも同一のものが存在するわけではないので、変数採択については、さらなる議論が必要である。また、推定方法自体の精緻化も必要であり、比較可能には少し時間を要する。オーストラリアについては、HILDAのデータ構造は特殊であるため、他国と比較可能なデータベース作成にはもう少し時間を要する。 (3)日本の特徴である、多様な住宅ローンタイプと住宅ローン需要の分析を行うため、住宅市場動向調査(国交省)のデータ(プールド・クロスセクション、7年分)を用いた推定を行った。なお、推定方法にはさらなる改善が必要である.
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Strategy for Future Research Activity |
ワークショップを、東京、メルボルン、あるいはアバディーンで開催し、推定結果の比較分析ための議論及び打ち合わせを行う。住宅市場および住宅金融市場に関する、3か国の国際比較分析を住宅資産のデータも含めてDPにする。住宅ローン選択と住宅ローン需要関数の同時推定に関しては、イギリスの推定の精緻化を行う。日本のパネル推定に関しては、さらなる改善を試みて国際ジャーナルに投稿する。 住宅市場動向調査を用いた推定のより一層の精緻化を図り、DPにまとめた後国際ジャーナルに投稿する。 また、2015年度の国際比較分析は、各国のパネルデータを用いた推定結果を比較する方法であったが、2016年度は3か国のパネルデータをプールして住宅ローン選択と住宅ローン需要関数の同時推定を行うことを試みる。推定に用いる変数の3か国の調整は若干困難を伴う作業であるが、データをプールすることで、税制、住宅金利動向、並びにマクロ経済状況、デモグラフィック状況の国別相違による効果をより明確にできると考えられる。 全国消費実態調査データを用いた推定をスタートさせる。
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Causes of Carryover |
適切に使用したが,若干(57,003円)残高が生じた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度であるので,研究成果の整理等のためのアルバイト費用に用いる.
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