2016 Fiscal Year Research-status Report
不完全競争下での戦略的な貯蓄行動:排出権バンキングと電力蓄電行動の動学的分析
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26380291
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Research Institution | National Graduate Institute for Policy Studies |
Principal Investigator |
田中 誠 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (10377137)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境政策 / エネルギー政策 / 排出権バンキング / スマートグリッド / 不完全競争 / 動学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、スマートグリッド環境における地域の消費者と供給者、ロードアグリゲーター等に関する動学的な分析フレームワークを構築した。従来の電力システムは、1社の電力会社が、管轄する地域の多数の需要家に電力を供給する「中央管理型」の方式であった。しかし、スマートグリッド環境では、多数の供給者が多数の需要家に電力を販売する「分散型」の方式をとる。このような分散的な環境で、各々の需要家が家庭用のエネルギー・マネジメントシステムにより、リアルタイムに消費量を管理するモデルを考察した。各家庭は、情報通信技術(ICT: Information and Communication Technology)を用いることで、リアルタイムに近隣の電力需給状況や価格シグナルに関する情報を交換して、効用を最大化する消費量を決定する。このような家庭を前提として、電力の需給均衡を導く分散的なアルゴリズムを開発した。この分散的なアルゴリズムは、中央管理的な方式と同じ均衡に導くことが示された。本研究で提案した方式のメリットは、供給者と消費者の数が増大するときに、分散的にローカルの情報を活用することで、効率的に均衡を導くことができることである。 また、スマートグリッド環境下における太陽光発電とデマンドレスポンス(需要反応)の関係についての実証研究も行った。太陽光発電パネルを所有する家庭に対して、電力価格を変化させることで、デマンドレスポンスの効果を計測した。その結果、太陽光発電パネル所有の家庭は、一般世帯に比べて、デマンドレスポンスの効果が25%程度にとどまる結果となった。これは、太陽光発電を行う家庭は、電力の「自家消費」をしており、価格の増減の影響を受けにくいためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初の計画に沿って、スマートグリッド環境における地域の需要家と供給者等の動学的な行動に関して、モデルを構築して分析を順調に進めることができた。さらに、スマートグリッド環境下における太陽光発電とデマンドレスポンスの関係についても、新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、スマートグリッド環境における地域の需要家と供給者等の動学的な行動に関して、シミュレーション分析を予定する。また、研究最終年度にあたり、これまでの分析フレームワークのさらなる拡張・応用を試みる。特に、異なる環境規制等のもとでの分析への応用は重要と考えられる。
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Causes of Carryover |
平成29年度に、研究成果を国際学会で発表する予定でおり、その旅費に充てるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、研究最終年度にあたり、研究成果を国際学会で発表するために海外出張を実施予定である。
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