2014 Fiscal Year Research-status Report
アジアの貧困軽減と日本の労働力不足解消に対する日本の「外国人技能実習制度」の貢献
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26380303
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
P Ratnayake 佐賀大学, 経済学部, 教授 (90221697)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アジアの経済発展 / アジアの貧困削減 / 技術移転 / 技能実習制度 / 日本の労働不足 / 日本の社会的価値観 / 日本の技術協力 / 日本企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、アジア諸国の実習生・研修生が日本で得た知識と資金を帰国後にどの程度の貧困軽減に役立てたのか、同制度が日本の労働力不足に対して積極的な効果を期待できるものとしてこのまま運用できる制度なのかについて、理論的・政策的・実証的に検討および評価し、制度的な問題点と改善点を明らかにすることである。それらを明らかにするため、初年度に開始した研究取り組みとして、日本の技能実習制度に関する資料・聴き取り調査を日本・タイ・スリランカ・インドネシアで実施した。その成果は、2014年11月26日に佐賀大学において「外国人技能実習制度:日本の労働力不足とアジアの経済発展に貢献できるか?」をテーマに国際シンポジウムを開催した。 これまでの研究で明らかになったこと次の通りである。帰国した実習生の多くが日本から得た知識と資金をもとに新しい経済活動を始めている。それによって、彼らの生活水準は実習を受ける前より高くなっていることがわかった。さらにチームワークや時間を守ることなどの社会的価値観の向上がみられたとの回答が多く出されている。実習生の派遣にかかわる制度は、各国の政府と民間派遣会社との間で非常に効率的に組織されているといえよう。しかし、各国の担当者が頭を悩ます主な問題として指摘されたことは、実習生が短期間で研修を止めてしまい、日本のどこかで不法労働者になり、日本との信頼関係に悪影響を及ぼしていることである。同制度は日本の労働力不足に対して、どの程度効果的に運用されているのかについて、また、アンケート調査を実施して実証的に実習生たちに対する人的資本育成の効果について、本年度の研究で検証し明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階における「研究の目的」はおおむね順調に進展しており、そう判断した理由は以下の通りである。外国人技能実習制度に関わる財団法人国際研修協力機構(JITCO)にて聴き取り調査および資料調査を実施したことで、同制度の理解を深め、長期データを集計分析することができた。タイ、スリランカ、インドネシアを含む国内外の共同研究者の協力を得て、それぞれの国で送り出し機関、帰国後の実習生から聴き取り調査を実施した。それらの成果は、2014年11月26日に佐賀大学において「外国人技能実習制度:日本の労働力不足とアジアの経済発展に貢献できるか?」をテーマに国際シンポジウムを開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
(平成27年度の研究費の使用計画) 国内調査:現在、日本で実習を受けている技能実習生から聞き取り・アンケート調査を実施する。また、本制度に関わる財団法人国際研修協力機構(JITCO)、受入団体、民間企業、雇用主から資料・聞き取り調査を行う。聞取り・国内資料調査を行いながら、日本の技能実習生受入制度の人的資源育成と日本の労働力不足問題の現状把握と政策的かつ実証的分析を行う。 国外調査:日本で技能実習・研修期間を終えて中国、インドネシアやタイへ帰国した後の彼らに対する聞き取り・アンケート調査を実施する。そこで、貧困軽減、自己経済力の強化、地域経済に対してどの程度貢献しているかについて分析を行う。 中間報告書の取り纏めを行う。
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Causes of Carryover |
昨年度は国内アンケート調査をする計画であった。国内アンケート調査では、アンケート票を9ヶ国語(日本語、英語、中国語、インドネシア語、ベトナム語、カンボジア語、タイ語、タガログ語、シンハラ語)を翻訳・準備するのに時間がかかったことによって、アンケート調査を年度末に実施することができなかった。そのため、その費用を計上することができず、次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
国内アンケート調査を9ヶ国語で翻訳した調査票を使って実施することと、計画通り次年度分の調査研究を実施するために使用する。
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Research Products
(4 results)