2014 Fiscal Year Research-status Report
ICTの活用による地域医療・健康を推進させるインセンティブ制度構築の研究
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26380307
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
辻 正次 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 教授 (90029918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 博昭 関西学院大学, 理工学部, 教授 (90107136)
井戸田 博樹 近畿大学, 経済学部, 教授 (10352957)
植木 靖 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, その他部局等, 研究員 (40450522)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 仮想市場法(CVM) / 支払意思額(WTP) / 3段階2項選択方式 / B/C比率 / m-Health / タブレット型端末 / 医療保険 / 診療報酬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、増大する医療費や医療資源の地域間の偏在といった問題を内在する日本の医療・健康・介護の分野において、ICT(情報通信技術)を活用することにより、より健康で活力にあふれるウェルネス社会を構築するための政策的基盤を確立することにある。 本年度の研究では、医療資源の乏しい山間部の地域において、その障害を克服して実施されている①画像伝送付救急車(e-ambulance)と、②在宅患者に対してタブレットを用いる遠隔医療(m-Health)について実地調査を行い、事業の特色、目的、手段、効果、さらには経済的評価を行った。 画像伝送付救急車(e-ambulance)ついては、高知県安芸市、室戸市で実施されている画像伝送付救急車プロジェクトについて実地調査を行った。これまでの携帯電話や無線といった音声のみが通信手段であった救急車と比較して、画像伝送装置を装備することにより、引き受け病院ではどのような患者が搬送されてくるのが事前に分かり、治療の準備が効率的に行えるとの効果をもつ。さらに、住民に対してこの救急車の価値(WTP:支払い意思額)をアンケート調査からもとめ、これとプロジェクトの費用とを比較する費用便益分析を行った。その結果、費用便益比率は0.48であり、便益は費用の半分であった。この比率は、他の遠隔医療のプロジェクトと同じほぼ同じである。m-Healthについては、兵庫県多可町の多可赤十字病院では、m-Healthとして、タブレット型端末を用いて、①訪問看護師などの遠隔コンサルテーション、②アラート機能を搭載した見守りサービス、③患者-医師のテレビ電話再診(遠隔診療)、これら3つを実施している。m-Healthはメリットを持つもの一方で、医療機関がそれを導入・運用するための経済的基盤が脆弱であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
住民に対するアンケート調査を通じて、山間部でのICTを用いた医療事業がどのような経済的効果を持つのか、実際に金額で表し、かつそれを事業の費用と比較した。公共資金で実施するプロジェクトでは、評価が実施されることになっている。現実的には費用便益分析が実施されることはほとんどない。これは他国でも同様である。このような困難である分析を実施した意味は大きい。本研究での成果を国際学会や国内学会で発表したが、高い評価を得た。E-ambulanceの費用便益分析では、世界的にも前例がない最初の分析である。
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Strategy for Future Research Activity |
健康増進のためのインセンティブ制度としての健康ポイントが本格的に実施されようとしている。健康にプラスになるウォーキング、体操、特定検診受診といったことを行えばポイントがもらえ、これは金銭や商品と交換できる。これが健康増進行動の動機となるのである。一体どのくらいの金額がもらえれば、住民は進んで上記の行動を起こす契機となるか、そのインセンティブ金額を推計する。さらにどのような行動に対して健康ポイントを付与すれば住民の健康が増進するのか、制度の設計を検討する。
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Causes of Carryover |
アンケートの実施の際に、実施地区からボランティアが現れ、アンケート調査を無償で支援してもらい、当初想定していた費用が不要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度のアンケート調査、書籍の購入、アルバイト料等に支出する予定である。
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