2016 Fiscal Year Research-status Report
第三国経由でのエネルギー資源の確保を目的とした新たなFTAの研究
Project/Area Number |
26380309
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
岩田 伸人 青山学院大学, 経営学部, 教授 (70203388)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | WTO / EAEU / 関税同盟 / ロシア / モンゴル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2017年)は、本研究課題「第三国経由でのエネルギー資源の確保を目的としたFTAの研究」および前年度の研究成果を踏まえて、資源大国ロシアと周辺のユーラシア諸国とのFTAの動きを把握する必要性から、これに詳しい在モスクワ日本大使館、ロシア政府および元ロシア国会議員等に対して事前の質問事項に沿ってヒアリングを行った。 その結果、判明したことは従来の日米欧が主導する自由化度の高いFTAとは異なるタイプの、いわば途上国対応型のFTAの一つとしてロシア主導の広域FTA「ユーラシア経済連合」(Eurasian Economic Union、以下EAEU)が存在し、これに周辺諸国が様々な形でリンクする現象が見られる点である。EAEUとモンゴルとの関係性を見るためにモンゴル政府(外務省アジア太平洋局長その他)および在モンゴル日本大使館(於:首都ウランバートル)においてヒアリングを行った。 これら本年度の調査・研究から、資源大国ロシア主導の地域統合EAEUとの関係を構築する国々にモンゴルのみでなくベトナムや韓国を含むアジア全域に広がる可能性が推察された。 これら(学術講演、現地調査・ヒアリング等)を通じて得られた知見は、2016年度発行の学術・専門雑誌、学会誌にて掲載された(後掲)。なお本研究の目的および当初の研究計画に沿って、元WTO(世界貿易機関)貿易環境部長氏および、元国連大学高等研究所シニアフェロー氏を海外より招聘し、学内にて、貿易に関わる地域統合と環境問題に関わる学内研究会を開催した(個人名省略)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画に基づき、ほぼ順調に進行している。その過程で、第一に、当初に想定していた研究者の招聘に伴う諸経費の中で、通訳代や会場諸経費が節約できたこと、第二に、当初に想定していた本研究の前提の一つであるアジア太平洋における広域FTA(具体的には、環太平洋経済連携:Trans-Pasific Pertnership)の締結が事実上の凍結となったことと、第三に、同TPPとは対照的に貿易自由化が低く、かつ広域な地域統合が、資源大国ロシアを主軸として台頭してきたこと、以上四点を踏まえて、本研究の精度を高めるためにさらに一年、延長する申請をし、これが受理された。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の3年計画で始めた本研究は、上記に記した理由により終了時期を一年延期する旨の申請が受理された。 2017年度は、この一年延期の理由(上記四点)に基づいて、EAEU(ユーラシア経済連合)の主導国ロシアが自国の資源エネルギーを低価格で輸出することを誘引として、EAEUとのFTA締結を北東・ユーラシア地域の国々に働きかける可能性があること、そして、そのことが新しいタイプのFTA形成の流れとして顕著になっていくのか否かを、現地調査および関係各国の報道や学術情報から確認し、それらの方向性を本研究の精緻化に役立てたい。
|
Causes of Carryover |
2016年度に海外から招聘した研究者との学内研究会(セミナー)にて、当初に予算計上していた「通訳代」および会場設営費が、科研費とは異なる学内研究費から支出するなどによって、大幅に節約できたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は、TPP(環太平洋経済連携)に代表される、アジア太平洋地域の広域FTAが進展するという前提の下で計画したものだが、世界情勢の変化、特に米国のTPP方針が大きく転換されたことを受けて、本研究の前提も変わる。他方で、本研究の核心部分である「エネルギー資源確保型FTA」の動向は、ロシアおよびモンゴルの動きを中心にさらに研究内容を精緻化する必要がある。よって、研究機関の延長と合わせて、助成金は、エネルギー資源確保型FTAの現地調査費に充てる予定である。
|
Research Products
(6 results)