2016 Fiscal Year Research-status Report
直接投資と中間財輸出の再検討:時系列変化・サプライヤーの海外移転・国内への影響
Project/Area Number |
26380311
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松浦 寿幸 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 准教授 (20456304)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多国籍企業 / 国際分業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最終財組立生産者による海外直接投資が行われた後、日本からの中間財の輸出がどのように変化するのか、また、国内の中間財生産者がどのタイミングで組立生産者に追随し、海外生産を開始するのか、さらには海外直接投資を実施した組立生産者、中間財生産者の国内拠点の生産品目や生産量、雇用はどのように変化するのかを分析している。詳細な品目別の貿易データと海外直接投資をリンクしたデータベースを構築し、これまで十分に分析されてこなかった海外直接投資の影響の経時的な側面に注目して分析を進めている。 一昨年前から進めている自動車部品産業を対象としたケーススタディからは自動車メーカーの直接投資は国内のサプライヤーからの調達を減少させることはなく、海外直接投資が関連取引企業の国内生産を空洞化させるとは限らないことが明らかとなった。本研究は学術誌に投稿し、査読者コメントを踏まえた修正作業を進めている。また、インドネシアの工場レベル・品目レベルのデータを用いた分析では、貿易自由化による関税率の低下は海外製品との競争回避のため地場企業は品質改善を積極的に行っていることが明らかとなった。本研究ついても、学術誌の査読者から有益なコメントを得たのでこれを踏まえて改訂を行っているところである。中国の企業データと貿易データをリンクさせたデータによる研究も並行して進めているが、学会等で報告し改訂作業を経たのち学術誌に投稿している状況にある。また、新たに開始した研究として、日本の企業レベルの取引データを用いた海外直接投資の影響についての包括的な分析についても着手している。具体的には、企業の海外直接投資がそのサプライヤーにどのような影響をもたらすかについて実証分析を進めており、平成29年の早い段階でディスカッション・ペーパーに取りまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト3年目の平成28年度は,年度当初の予定通り研究を進めることができた。いくつかの論文は学術誌に投稿し査読者からのコメント対応を済ませており、最終的な掲載の判断を待っている状況である。また現在進めている中国の企業レベルの貿易データによる分析や日本の企業レベルの取引データを用いた分析についても学会やセミナーなどで報告を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクトの最終年度(4年目)にあたる平成29年度は,前年度までに得られた分析結果を論文としてまとめ、国内外の学会やセミナーで報告し,論文の精緻化を進め,国際的学術誌に投稿する。すでに学術誌に投稿している論文については、査読者のコメントを踏まえて修正を重ねており、平成29年中に完成する見込みである。
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Causes of Carryover |
予定していた出張旅費を先方が負担してくれることになったほか、購入予定であったデータベースの最新版の発売が遅れたため購入を見送った。そのため使用額が当初の予定額を下回ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は、昨年度購入予定であったデータベースが早い段階で更新される見込みなのでこれを購入するほか、共同研究者との共同研究のための出張と研究成果の学会報告のための出張を予定している。
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