2014 Fiscal Year Research-status Report
知的財産権制度の国際調和と貿易およびイノベーションの関係に関する実証研究
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26380315
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
伊藤 萬里 専修大学, 経済学部, 准教授 (40424212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 鮎夢 摂南大学, 経済学部, 講師 (20583967)
白井 克典 大阪学院大学, 経済学部, 准教授 (90547225)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | R&D / イノベーション / 生産性 / 輸出 / 企業の異質性 / 知的財産権 / 特許保護 / 重力モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)研究初年度は、第一に分析に必要となる2国間貿易データと企業レベルのパネルデータを構築した。2国間貿易データはHS6桁コードで示された約5000品目別に世界各国の2国間貿易額をデータベース化し、各国の属性を示すデータベースとも接合した。企業レベルのパネルデータは経済産業省「企業活動基本調査」の個票データを利用して、日本の製造業企業の輸出とR&D活動の関連性を分析できる形にデータベースを整備した。 (2)最新の研究成果に関する情報収集を実施した。特に、研究代表者が長期滞在した米国ハーバード大学や、その他北米の研究機関において開催された研究セミナーや学会への参加を通じて、2国間の貿易を説明する理論と実証モデルについて最新の動向を調査した。併せて、外務省、経済産業省、農林水産省の行政官と貿易自由化や特許保護など関連する制度の調和による2国間貿易への影響と、国際調和に向けた課題について意見交換を実施した。 (3)構築したデータを活用して、実証分析を実施した。2国間貿易データを利用した研究では、2国間の特許保護の差が大きいほど貿易コストが拡大するとの仮説の元、ミクロ経済学的基礎に基づく構造重力モデル(Structural gravity equation)を適用し実証を試みた。その結果、特許保護に敏感な医薬品産業など一部の産業について、特許保護の調和が図られている国家間であるほど貿易が活発になることが示された。企業レベルの分析については、輸出に従事している企業ほどR&D活動を積極的に進めていることが判明し、両者の間にどのような因果関係あるのかについて計量経済学の手法を利用して実証分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画では主に分析に必要となる貿易統計の整備と企業レベルのパネルデータを構築すること、分析の枠組みとなる理論と実証モデルの最新の動向を調査することであった。この当初の計画を年度内に終了し、予定していた基礎的な実証分析を実行に移すことができた。貿易データを利用した実証結果については独立行政法人経済産業研究所ディスカッションペーパーとして公表する予定であり、さらに改善を加え、計画2年目に海外学会発表と査読付き学術誌への投稿を目指す。また、企業データを利用した成果の一部は、書籍出版(『新々貿易理論: 企業の異質性と国際貿易・外国直接投資の構造』 ミネルヴァ書房、2015年刊行予定)によって次年度の公表に結び付けることが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画2年目にあたる平成27年度は、初年度に構築したデータベースを利用した実証結果を積極的に報告していく。特に、海外学会での研究報告を目指し、その過程で海外研究者からのコメントを得て、研究に適宜修正を加えていく。並行して、引き続き実証研究を取り組んでいく。具体的には、 (1)日本の製造業企業を自社R&D 投資のみに依存している企業と社外のR&D資源も活用している企業などに分類し、こうしたR&D 戦略が輸出参加確率に与える影響を、離散選択モデルを利用して推計する。 (2)2国間貿易データを利用して、貿易額を品目数の変化と品目当たりの平均額変化に分解し、結果に違いが見られるか検証する。さらに、知識集約的な品目とその他の品目との差や、時点間で差が見られるか否かなどについても検証を加えていく。
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Causes of Carryover |
当初の計画よりもデータベースの構築作業にマンパワーを割く必要性が生じ、初年度にアルバイト雇用による人件費・謝金に手厚く配分せざるを得なくなった。このため初年度に予定していたPC購入を断念した。また、年度末に予定していた研究進捗状況に関する打ち合わせに必要な出張を研究代表者の都合により年度内に実施が不可能だったため次年度に延期することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
支出を予定していたPC購入費については、その分を次年度のアルバイト雇用のための人件費・謝金として支出する計画である。なお、PCは既存のもので対応することとした。また、研究打ち合わせ延期によって生じた出張旅費は、次年度に研究打ち合わせを実施し支出する計画である。
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Research Products
(1 results)