2014 Fiscal Year Research-status Report
非対称的な2国間のFTAの形成が貿易自由化に与える影響
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26380318
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
野村 良一 立命館大学, 経済学部, 准教授 (60465599)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | FTA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、急増する自由貿易協定(FTA)に関する今日的な特徴(殆どが2国間でのFTA・非対称的な国の間でのFTAの増加)を踏まえ、非対称的な2国間でのFTAが世界全体の貿易自由化に寄与するかを理論的に検討することである。平成26年度の達成目標の1つは、各国企業間の生産技術格差がFTAの締結ならびに、世界全体の貿易の自由化に与える影響を明らかにすることであった。 これまでに、市場規模は異なるが生産技術は同じである3国3市場モデルを用いた研究を行ってきたので、このモデルに生産技術に関する非対称性を導入することで上述の課題に取り組んだ。各国の生産技術が異なる場合、FTAが形成されていなくても各国政府がそれぞれの国に課す関税水準が異なりうることが理論的には知られている。ただし、WTOの最恵国待遇(MFN)の原則のもとでは、そうした差別関税は原則として認められない。したがって、本研究では、両方のケースについて取り組んだ。各国企業の生産技術に格差が存在する場合でも、各国の市場規模が同一で十分に大きければ、差別関税のもとでもMFNのもとでも、どのような2国間のFTAも形成されること、また非加盟国の経済厚生および世界全体の経済厚生も増加することを示した。ただし、市場規模が十分に大きくない場合は、FTA交渉国のうち非効率的な企業を有する国がFTAを締結するインセンティブを有しにくくなるとの結果を得た。こうした結果は、当初、似通った国の間でのFTAの形成が多かったという事実と整合的である。こうした結果を踏まえ、現在、形成された2国間のFTAが世界全体の貿易の自由化を促進するかを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の研究計画は、3国3市場モデルに企業の生産技術格差を導入し、2国間のFTAの形成条件を明らかにし、そうしたFTAの形成が世界全体の貿易の自由化を促進するかを検討することであった。技術に関する非対称性を有する2国間によるFTAの形成条件に関する結果は得られたが、世界全体の貿易自由化に関する研究は必ずしも十分に進まなかった。したがって、(3)の状況に相当すると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「9.研究実績の概要」で示した結果を踏まえ、技術に関する非対称性を有する2国間FTAの存在が、世界全体の貿易の自由化を促進するかについて、平成27年度中の論文の完成・投稿を目標として取り組む。その後、上述のモデルに市場に関する非対称性の導入に取り組み、平成27年度中に研究会・学会等で報告し、Discussion Paperを作成することを目標とする。
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Causes of Carryover |
参加予定だった国際学会(10th World Congress of the RSAI)が政情不安のために開催中止になったこと、および所属機関の変更に伴う必要経費の変更によるもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
もともとの執行計画に加え、8月に行われる国際学会(55th ERSA Congress)で報告することで執行する予定である。
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