2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380319
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
福味 敦 兵庫県立大学, 経済学部, 准教授 (20379465)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | インド / 電力改革 / 実証分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、インド電力セクターがなぜ現在の苦境に陥ったのか、そして90年代に開始された改革がなぜ成果をあげないのか、という問題意識のもとで、インド特有の政治的、社会的な背景に焦点を当てながら、インフラ整備に遅延が生じる背景について、実証的に明らかにすることを目的としている。研究の軸となるのは、①電力事業体や規制委員会など、ステークホルダーへのインタビュー、②おもに州レベルのデータを用いた計量経済分析、③農村調査、であるが、計画に従い27年度は①と②に注力した。すなわち第一に、前年度に引き続き、パンジャーブやデリーにおいて、電力事業体の他、州と中央の規制委員会において、チェアマンをはじめ首脳陣と面会、電力改革に対する見解と姿勢について聞き取りを行った。第二に、計量経済分析については、世界銀行が提供する企業レベルデータや、電力改革に関するインデックスを用いて、実証研究を行った。その結果、企業レベルでの停電に伴う営業損失の決定要因を分析した結果、配電会社の営業損失やコーポレートガバナンス、または規制委員会のガバナンスが重要な要因であることが実証的に明らかにされた。その成果は国内の学会と国際カンファレンスでそれぞれ一回ずつ報告を行った。またすでに二本の論文を執筆し、次年度に公刊される予定である。第三に、農村調査については、質問項目やタイミングなどについて、現地研究協力者の来日時に打ち合わせを行った。今年度と来年度に、現地研究機関の調査員のサポートを得ながら、電力改革に対する農家世帯の考え方について、データを収集する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電力会社や規制委員会など、供給側ステークホルダーのインタビューについては順調に進んでいる。計量経済分析については、企業レベルデータと州レベルデータを用いて既に二本の英語論文としてまとめており、順調に進んでいるといえる。もう一つの柱となる農村調査による電力の需要側の調査については、今年度内にパイロット調査を行う予定であった。しかしながら学務との関係上、年度内に実施できなかったため、若干の遅れがみられる。以上の様に、計画に変更一部要する部分はあるが、総合的に判断して、おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
第一に、28年度は農村世帯レベルでのアンケート調査を行うこに注力する。今後も引き続き現地協力者と緊密に連携をとりながら、調査票、サンプリングの方法を工夫しつつ、年度内に調査を実施することを最優先課題とする。得られたデータの内容によっては再調査も必要となる可能性があるため、できるだけ早い段階で実施したい。第二に、既に基本的な分析を終えつつある計量経済分析であるが、得られた成果を精緻化することで、年度内にインパクトファクターのある国際ジャーナルへの投稿を行う。同時に、IHDSなど社会・人間開発面に着目したマイクロデータに含まれる電力インフラ情報を用いて、人間・社会開発と電力に関する分析を新たに開始する。第三に、ステークホルダーへのインタビューについてはグジャラートをはじめいくつかの州で行ってきたが、ビハールやウッタル・プラデーシュなどの貧困州、改革に先鞭を付けたオリッサでは実施していない。農村調査とあわせて、可能な限り訪問することを心がける方針である。
|
Causes of Carryover |
インドへの出張期間が予定より短縮されたことにより、必要額が予定より少なくなったことが原因として考えられる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度中に予定している農村調査により消化予定である。
|