2014 Fiscal Year Research-status Report
タクシー規制緩和の評価とこれからの規制政策に向けた理論・実証研究
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26380329
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
斉藤 都美 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (00376964)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 規制 / タクシー / 事故 / リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はこれまでのタクシー規制政策の問題点について多方面から検討した。その結果、以下のことがわかった。 1990年代にタクシーの事故率は大幅に上昇した。本研究課題では本年度、この事故率上昇の要因の一つに、需給調整規制があることを明らかにした。1990年代の不況期にタクシー需要は減少したが、それに見合うだけの減車が十分に行われてこなかった。そのため供給過剰が発生し、結果的に事故が増加した。なぜ供給過剰が事故率上昇をもたらすのか、その理由については今後の検討課題だが、減車が十分に行われなかった結果として事故率が高まったという意味で、1990年代の事故率上昇は規制の副作用であったといえる。 本研究課題の貢献は、こうした規制の問題点を明らかにしたこと、さらに今後のタクシー規制政策の検討にあたって、この点を考慮する必要性があることを指摘した点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、タクシー需給調整と安全性の関係についての一つの知見を明らかにすることができた。このテーマについては、データを収集し、統計的に分析し、結果をまとめて論文にするところまで進めることができた。またいくつかのセミナーや国内外の学会で報告も行った。その結果、タクシー事業者の戦略的な参入・退出の意思決定を含むモデルの構築や推定をおこなってみてはどうかという指摘を受け、現在はそうした点について検討を加えている。 本研究課題の最終的な目標は、今後のタクシー規制のあり方全般について議論することにある。したがって本年度はそのうちの一つの検討課題についてのみ達成したことになる。 上記の意味で、「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の点を中心に分析を進める予定である。 第一に、2002年に始まったタクシーの規制緩和の評価を行う。マスコミでは規制緩和後、安全性の低下や雇用の不安定化といった弊害が指摘され、ここ数年で規制強化への逆戻りが議論されている。だが実証的観点から十分に検討がなされているとは言えない状況でこうした議論が繰り返されている。規制緩和によって実際に何が起きたのかについて、データに基づき事実を明らかにする。 第二に、GPSなどのITを利用した近年の新たなタクシーサービスについて検討を進める。GPSやスマホによる配車はタクシー市場の競争体系を大きく変えつつある。これまではタクシーでは価格競争が十分に機能しないとされてきたが、技術革新により価格競争が可能になりつつある。このことは市場をどのように変えるのか、また規制はそれに応じて変わっていくべきか、あるべき規制の姿を検討する。
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Causes of Carryover |
国外学会での報告を予定していたが、学内業務によりキャンセルしたことが最大の理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定していた学会に今年度の参加が日程的に可能であれば参加予定である。
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