2016 Fiscal Year Research-status Report
タクシー規制緩和の評価とこれからの規制政策に向けた理論・実証研究
Project/Area Number |
26380329
|
Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
斉藤 都美 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (00376964)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 事故外部性 |
Outline of Annual Research Achievements |
自動車走行に伴う事故外部性、すなわち追加的な走行に応じて発生する私的限界費用と社会的限界費用とのズレをいかにして内部化すべきか検討した。日本の現行制度では、追加的走行に伴う費用負担はガソリン代のみという意味で、ガソリン税が外部性を一部内部化する役割を担っている。だがガソリン税は燃費が良い車ほど負担が軽くなり、安全運転度などの異質性が反映されないという意味で、公平でも効率的でもない。欧米では代替的な課税方法として、保険料に走行距離が反映された自動車保険(pay as you drive auto insurance: PAYD)に課税する政策が提案されている。この政策の利点は、運転者の異質性を考慮した課税が可能であること、また保険会社がすでに過去の事故歴などから運転者の異質性を反映した保険料を設定しているため、実行可能な政策だということにある。本研究では、日本で仮にPAYD自動車保険が普及し、それに課税した場合にどの程度事故が削減されるか、都道府県データを使って実証的に分析した。その結果、年間平均走行距離が最も長い愛知県では23.3%走行距離が削減されることが望ましいが、ガソリン税では19.6%の削減にとどまること、また年間平均走行距離が最も短い鳥取県では本来17.6%の走行距離削減が望ましいが、ガソリン税の場合は19.6%と過大に年間走行距離が削減されてしまうことになることなどがわかった。この結果は「自動車保険への課税による事故外部性の内部化について」明治学院大学『経済研究』152号、2016年7月にまとめられている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自動車走行による事故外部性の内部化をどのように行うべきかを検討することは、本研究課題の柱の一つであった。この分析を終わらせ、論文にまとめたことで当面の目標は達成されたため、おおむね順調に進展していると考えている。 だが次の課題も残されている。タクシー市場は、Uberの参入の影響を無視して規制のあり方を考えることが困難になっている。だが現状ではUberは国内のごく一部の地域で営業しているにとどまり、実証的に検討するためのデータも存在しないため、今後も継続的な研究が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
Uberの参入に伴って発生する論点を明確にすることが当面の目標である。Uberの登場はこれまでのタクシー市場の議論の前提を大きく変える出来事であった。たとえばタクシーサービスは目の前に来たタクシーに乗るしかないため、価格競争や品質競争が不可能だとされてきたが、スマホで事前に料金検索ができ、運転手の評価システムを導入したUberはその両方を可能にした。このようにUberは既存事業者と根本的に異なる特徴を持つが、経済学的に何をどのように検討したらよいかについて、十分に議論が整理されているとは言えない状況にある。そこでまずは欧米の事例も参考にしつつ、議論を整理して論点を明確にすることが目標である。
|
Causes of Carryover |
国際学会への参加を予定していたが、学内業務により参加できなかったため、予定よりも旅費支出が小さくなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究の進捗状況に合わせ、物品の購入や旅費の支出を行う。
|