2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380330
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋葉 弘哉 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60138576)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 通貨同盟 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
通貨同盟と非加盟国から成る経済体系は、欧州のユーロ圏のマクロ経済変数を用いたMcAvinchey and McCausland (2009) の実証研究によると共和分関係の存在が立証されず、長期的に不安定な関係が内在することが示唆されております。私は、この不安定性は欧州ユーロ圏に特有の特徴ではなく通貨同盟という経済統合に関してはあらゆる通貨同盟に該当する普遍的で本質的な不安定性ではないかという疑念を以前から抱いておりました。平成26年度は標準的な開放マクロモデルを援用し、通貨同盟の特徴を示すLevin (1983)の貨幣市場の定式化も用い、Argy (1994)による線形モデル化の方法を用いて独自の動学的モデルを構築致し、解を求めてみました。その結果、予想通りモデルは不安定解をもつことが示されました。すなわち開放マクロ経済学の視点から見ると、通貨同盟は非加盟国との関係を考慮すると本質的に不安定な体系であり、長期的に安定的な解に収束することは不可能であるという結論が得られました。それでは、この不安定性を排除する方法(政策)は存在するかということが次の問題として生じて参りました。この問題に対しましては、購買力平価とカバーなしの金利平価が、ともに不成立で満たされない場合、体系の安定性が満たされる場合がありうるという興味深い事実を発見致すことができました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私が当初念頭に置いておりましたような開放マクロ経済モデルは、いくつかの仮定の下で通貨同盟と非加盟国を取り込むことができるようなモデルに拡張致し、さらに適切な修正を施しました。そのような開放マクロモデルの初期値を明示できる線形化を提案した先行研究に倣い、モデルを線形化し解くことが可能な形に修正し、長期均衡解を求められるようにすることができました。しかしその解を経済学的に解釈致すよりも、解が不安定解であることをより明確に示すためには、モデルの安定条件を詳細にわたり考察致し、当該研究が当初から考えておりましたように解の不安定性の源泉となりうる要因も、モデルの範囲内で明示することができました。平成26年度に構築した開放マクロ経済モデルでは、ここまで達成致すことができ、一応の成果が得られたと考えております。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には標準的な開放マクロ経済モデルを援用して、通貨同盟と非加盟国から成る経済体系は不安定であるということを証明いたしました。次の問題は、この標準的なモデルを拡張し、(1)より一般的な開放マクロモデルでも不安定性が示されることを立証し、さらに(2)その解の不安定性の源泉を特定化して示し、(3)経済政策の問題としてこの解の不安定性を軽減あるいは解消するための適切な経済政策を提示することであると考えております。私は通貨同盟がこのような、長期的に安定的な解を持たない可能性の大きい経済統合は採用すべき統合形態であると考えておりませんが、中東やアフリカでの動きを見ておりますと、早めに明確な一般的結論を得て、しかるべき適切な政策提言を示したいと考えております。平成27年度でどこまでできるか解りませんが、鋭意研究に邁進いたしたいと考えております。
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Research Products
(1 results)