2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380330
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
秋葉 弘哉 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60138576)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 通貨同盟 / 安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の研究により、通貨同盟では、非加盟国との間での財市場と貨幣(資本)市場から成る動学的なモデルから、長期的に不安定な関係が導かれ、安定的な解に収束することは不可能であるという結論が得られました。その結果を受けて、昨年度はこの不安定性を排除する方法(政策)について深く考察致しました。 特にカバーなしの金利平価が満たされない場合に体系が安定的になる余地があるということが解ってきましたので、その意味するところを考察致して参りました。最も簡単に証明されることは、通貨同盟と非加盟国が変動レート制ではなく、固定レート制を採用している場合であり、その場合には自由資本移動の下では通貨同盟と非加盟国の金利が均等化し、不安定要因が排除されることが示されました。 しかし変動レート制を採用している場合に体系の不安定性を排除する方法の考察には時間がかかっております。変動レート制が世界の主要国で採用されるようになったのは1970年代以降の時期であり、当時の多くの人々が多くの理由を挙げて変動レート制の採用を擁護致し、それが受け容れられて来ました。私は当該研究を通じて、むしろ固定レート制の方が安定性の観点からは望ましいのではないかと考えるようになってきました。通貨同盟の形成ということは、実はその定義から同盟国間では厳格な固定レート制を採用することを意味しておりますので、翻って通貨同盟と非同盟国との間の関係に関しても、固定レート制の採用がむしろ望ましいのではないかと考えるに至りました。このような立場は、多分少数派ではないかと思いますが、Mundell(1997)の立場が参考になるのではないかと思い至り、今年度も引き続き変動レート制下での体系の安定性の回復問題を考察致したいと存じます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
通貨同盟と非加盟国から成る体系の不安定性が、貨幣(資本)の自由移動の結果としてのカバーなしの金利平価条件にあることが解り、その解決策(政策)としては、当初思ってもみなかった為替レート制度の選択にあることが次第に明らかになって参りました。そのため、為替レート制度の選択に関する先行研究に立ち戻り、これまでの研究成果を再度考察致し、研究を継続致したいと考えております。 通貨同盟が非加盟国との間で固定レート制を採用するとすれば、(1)同盟域内では定義から固定レート制、さらに(2)非加盟国とも固定レート制、という二重の固定レート制の制度の下で、同盟内各国は対外経済活動を行うことになります。しかしこのような二重の固定レート制下での各国経済の安定性問題は、これまでにあまり考察されてこなかった問題の様に思われます。通貨同盟の安定性を巡る問題は、まず同盟を形成している各国経済が安定的でなければ成立しないという点を考慮すれば、今後はこの側面からも安定性の問題を考察する必要があると考えるに至りました。
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Strategy for Future Research Activity |
通貨同盟と非加盟国との間の長期的な不安定性の問題は、カバーなしの金利平価が成立しないことが一つの解決策であるという、ある意味で逆説的な結論を意味していることを踏まえて、もう一つの解決策としての固定レート制の採用を考察致す必要があると考えるに至りました。 しかし、もしも通貨同盟が非加盟国との間でも固定レート制を採用するとすれば、(1)域内での固定レート制に加えて、(2)域外とも固定レート制を採用する、という二重の固定レート制のもとで対外経済活動を行うことになりますが、このような、ある意味で強い規制の下で、通貨同盟加盟各国の安定性が保証されるかどうかは、これまでにあまり考察されていないように思われます。今後はこの点に焦点を合わせて研究を継続致したいと考えております。
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