2014 Fiscal Year Research-status Report
民間予測集計の特性を生かした新しい景気早期警戒指標の開発
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26380332
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
飯塚 信夫 神奈川大学, 経済学部, 教授 (50612389)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | リアルタイムデータ / 経済予測の評価 / 景気循環分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
景気動向を先読みするための先行指標はこれまでも数多く作成されてきた。日本政府においても、「景気動向指数」(内閣府)において先行指数が毎月算出・公表されている。こうした指標の多くは、景気変動に先んじて変化する経済データ(例えば、在庫指数)を集め・加工したものであるが、その先行性は必ずしも安定的ではないため、先行指標のパフォーマンスも不安定なものとなっている。 一方、毎月の経済データの動向を観察し、経済成長率を中心に先行きを予測する民間調査機関のエコノミスト(フォーキャスター)は日本国内だけでも40人強存在する。こうしたフォーキャスターの予測結果は、従来、年度単位で集計されていたが、2004年から始まった「ESPフォーキャスト調査」によって月次で予測結果が集計されるようになった。集計の対象も、年度値だけでなく、四半期値や金融政策の方向性など幅が広がってきた。 本研究はこうした月次集計の結果を、景気の早期警戒指標のパフォーマンスの改善に生かすことを狙いとしている。 初年度の2014年度は、ESPフォーキャストを中心とした民間予測集計結果およびその比較対象となる政府経済見通しのデータベースを構築した。また、その評価の際に必要な経済データの当時の実績値(リアルタイムデータ)のデータベースも構築した。こうしたデータを用いて、まずは年度値予測の特性分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画の下記の3つのポイントについておおむね達成できたため。 ア)政府と民間調査機関の経済予測結果およびリアルタイムデータのデータベースの構築は完成した。 イ)ア)のデータを用いた経済予測の特性分析については、年度ベースの物価予測の特性について国内(統計学会連合大会)および海外(International Symposium on Forecasting(ISF))で学会発表し、その成果を公刊論文とした。 ウ)予測の方向性に注目した分析手法を始め、最近の経済予測の評価手法やその活用法についてはISFにおける海外研究者の発表から学んだほか、鋭意、先行研究のサーベイを実施中である。
このほか、2014年度の内閣府経済社会総合研究所による「景気動向指数の改善に関する調査研究」の委員に招聘され、現状の景気動向指数の問題点、改善の方向について議論、提案をした。これは、本研究の最終目標である新しい景気早期警戒指標の開発に役立つと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は当初予定通り、景気作成方法の研究を中心に行う。最先端の計量分析手法について、年度内に複数回、一橋大学の渡部敏明教授に面談して指導いただく予定である。そのうえで景気指標の試作まで到達したい。 海外学会は、本務校での業務の都合などの事情もあり、平成27年度は、予測関連のセッションを持っているEURO(European Conference on Operational Research)に参加。平成26年度の研究で作成した民間調査機関の予測データベース(ESPフォーキャスト)の特性を分析した結果を発表する(すでにAbstractは受理されている)。 この成果は国内で発表する。統計関連学会などの大きな学会だけでなく、より突っ込んだ議論が期待できる小規模の研究会で発表しコメントをもらう。すでに、平成26年度内の2015年3月に「景気循環と地域経済」コンファレンスで途中経過を発表し、平成27年度についても一橋大学の経済統計ワークショップでの発表が決まっている。
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Causes of Carryover |
年度末(2015年3月)に国内でコンファレンスがあったため、旅費等の支出に備えて事前の支出を抑制していたが、コンファレンスへの出張旅費等が多額にならずに済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
円安進行により海外学会発表の費用が膨らむ傾向にあるため、次年度使用額として繰り越した金額は旅費を中心に使用する。
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