2014 Fiscal Year Research-status Report
国際的公共インフラ供給のための国際分業の理論的分析とその東アジアへの適用
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26380333
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
多和田 眞 愛知学院大学, 経済学部, 教授 (10137028)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公共インフラ / 国際貿易のパターン / 貿易利益 / 東アジア経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来行ってきた公共中間財の存在する場合の国際貿易の理論分析の研究を踏まえて、公共中間財を公共インフラストラクチャーとした場合のモデルの作成を重点的に行ってきた。 理論的分析の実績は以下のとおりである。公共インフラストラクチャーの主要なものは鉄道や高速道路、港湾などの輸送インフラや通信施設などが考えられるため、産業規模が大きくなると混雑現象が生じると考え、そのような場合に適合した公共中間財を生産の中に導入して、国際貿易のパターンや貿易利益の分析を行った。従来の分析では公共中間財が純粋公共中間財の場合は静学分析のみならず動学分析もJ.McMillan, “A Dynamic Analysisof Public Intermediate Good Supply in Open Economy”, International economic Review, 1978 や A. Yanase and M.Tawada, “History-Dependent Paths and Trade Gains in a Small Open Economy with a Public Intermadiate Good”, International Economic review, 2012 で行われてきている。そこで、本年度は混雑現象を引き起こすような公共インフラを導入して、公共インフラの投資的な性格を考慮して動学的に捉えた分析を行った。 本研究の成果は柳瀬明彦氏との共同で論文「Public Infrastructure and International Trade in a Small Open Economy: A Dynamic Analysis 」としてまとめ国際誌への投稿を行ってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関連した従来からの研究のサーベイを行う中で、本研究課題への足がかりとなる研究を理論的分析によって行うというのが初年度の目標であった。この目標に沿って、公共インフラを生産に含めた国際貿易モデルを従来の研究成果を踏まえて構築して、そのモデルによって分析を行い、論文を作成した。 分析結果は小国が公共インフラを集約的に使用する産業に比較優位をもち、その財を輸出する。大国は公共インフラへの異存度の低い産業に比較優位を持ち、その財を輸出するという結果を得た。また貿易利益に関しては、小国には貿易利益をもたらすが、大国は場合によっては貿易損失をこうむる可能性があるという結果を導出した。静学分析ではどのような貿易国も貿易利益を享受できるのに対して、動学分析では公共資本の蓄積状況によって、小国は公共資本に集約的な財への生産を活発にするため公共資本の蓄積が進み、生産可能性フロンティアが拡大するため、貿易利益を享受できるが、大国が公共資本に非集約的な財の生産に比重を移すため公共資本蓄積が進まず、生産可能性フロンティアは縮小する。その結果、大国は必ずしも貿易利益を享受できるとは限らない。 このような公共インフラと国際貿易の関係のメカニズムを理論的なモデル分析において明らかに出来たことで、当初の目的は十分に達成したと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に完成した論文の国際誌への掲載を目指す。さらに本来の目的である、公共インフラの国際貿易の問題や国際公共財と国際貿易の関係の解明に取り組む予定である。近年の日本や中国にとって、アジア諸国への公共インフラの輸出は喫緊の非常に重要な課題となっており、その意味で前者のテーマの分析は非常に意義のあるものと考える。また、食料貿易においてみられるように貿易財の品質が貿易当事国の間で問題になることも増えてきている。このような2国間における貿易財の品質についての情報の非対称性がもたらす弊害を防止するための国際組織の形成は国際公共財としての性格を意持つと考えられる。このような視点から、後者の問題に取り組む予定である。 さらに本年度はアジアのインフラ整備の現状について文献のみでなく、その実態把握のために中国とベトナムへの視察、あるいは少なくともこれらの国の研究者との意見交換を計画している。
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