2016 Fiscal Year Research-status Report
後期高齢者医療制度は医療費抑制の目的を果たしているか?
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26380351
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Research Institution | Kumamoto Gakuen University |
Principal Investigator |
岡村 薫 熊本学園大学, 経済学部, 准教授 (70581974)
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Project Period (FY) |
2015-03-01 – 2019-03-31
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Keywords | 国民医療費の将来予測 / 高齢化社会 / 生きている高齢者の医療費 / 死亡時点の医療費 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究のメインテーマである「後期高齢者医療制度が医療支出抑制に働いているか」を検討していくにあたって、平成28年度研究では、高齢者の人口に占める割合の増加が将来の医療支出にどの程度影響を及ぼすのかを計測した。これまでの研究では、医療支出の増加の原因は技術革新と高齢者の人口に占める割合が増加すること、という一定の見解が示されてきたが、そこでは人口に占める死亡者の割合が増えるという医療支出増大のもう一つの要因が見過ごされてきた。人間は死ぬ直前に多額の医療費がかかっている。人口に占める高齢者の割合が高いということは近い将来、たくさんの人が死ぬ社会がやってくるということだ。将来の医療支出を予測する上で、この効果を考慮することは非常に重要であるにもかかわらず、これまでの医療支出の予測モデルでは考慮されてこなかった。本研究において我々は医療支出の将来推計においてこれまで考慮されてこなかった「死亡数の増加」の影響を踏まえた新しいモデルを提示し、計算をした。 現時点の結果では、死亡者が増加することで将来の医療費に与える影響は毎年約1割程度であることがわかった。 これらの分析結果については、2019年7月にボストンにて開催されるInternational Health Economicsにおいて発表する予定である。また、この結果を踏まえて、2008年度に発足した後期高齢者医療制度が高齢者の受信行動に変化を及ぼしたか否か、変化を及ぼしたとするならばどのようなものであったかについて検討を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題にある後期高齢者医療制度を考察するにあたり高齢者の医療支出を単体で取り上げても、それが社会に与えるインパクトがどの程度のものであるかはよく分からない。まずは、高齢化社会が国の医療支出にどう影響を与えているのかというマクロの影響をみなくてはならない。その意味で、平成28年度に得られた研究成果は本研究課題の根幹となり、今後の議論の土台となるものである。 昨年1年間において、使用するデータの特性を鑑みながらどのモデルが良いのかを検討し、現状で最もよいと思われるモデルが選択、計算結果を得てのちモデルの評価、及び将来推計としてきた。年度末にはほぼそれらの作業が完了し、翌年度に論文の形にまとめて投稿するまでに進めることができた。3年半という研究期間のうち、残りの2年間に向けての基本的分析ができたことは、最終的に目標とする到達点に向けて概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、上記の研究成果を論文としてまとめ投稿することを第1の目的とする。並行して、後期高齢者医療制度における高齢者の医療受診行動についての検討を始める。具体的には、熊本県後期高齢者医療制度広域連合と連携をとり、データの収集、モデルの確定などの作業をする予定である。 また、研究を遂行する上での課題(研究代表者が平日ほぼ母子家庭状態であるため、端的に言えば家庭と仕事・研究の両立が非常に困難)を解決するために、本研究に関する研究補助として本年度も1名アルバイトを雇う予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者である私の体調不良と勤務校の業務のため、予定していた調査などへの出張ができなかった。また、データの整理のためのアルバイトが予想以上に優秀で、あまり作業時間がかからなかったため人件費の支出が予定よりも少なくすんだ。 翌年度にアメリカで開催される国際学会での学会報告を予定しており、旅費が多額になることが予測されることから、次年度使用額は全てその費用として適用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を含めた次年度のおおよその予算を100万円とみなし、使用計画を以下のとおりとする。国際学会への出張旅費として約40万円(内訳:航空券 約20万円、宿泊代 約20万円(ボストン市内1泊約4万円(学会レート)×5泊)、論文の共著者との打ち合わせ約40万(大阪出張交通費約万5円×8回)、データ整理のアルバイト雇用に約10万円、書籍など備品購入代として約10万円。
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